sb2きのうソフトバンクの孫社長が「光の道」についての新提案を発表した。大筋はこれまでの提案と変わらないが、私が何度も質問した株主構成がやっと明示されたのが一歩前進だ。新会社を考えるときは、そのガバナンスを決めることが第一で、細かい技術的な計算はそのあとでいい。

しかし問題は、その株主構成である。図のように国が40%で通信各社が20%ずつとなっているが、これでは今の「半国営企業」のままだ。NTTの経営が非効率になっている最大の原因がこの中途半端な経営形態なので、新会社はその欠陥を継承することになる。しかも国が2000億円も出資するのを「税金ゼロ」というのは看板に偽りがある。

これはSBが4年前に提案した「ユニバーサル回線会社」構想とよく似ている。民間出資で政府が債務保証し、「光ファイバー公社」をつくれという話で、当時の「通信と放送懇談会」に提案されたが、「いまどき半官半民の特殊会社なんて時代錯誤」と一蹴された。

ソフトバンクが繰り返しこういう提案を出してくる背景には、ADSLのユーザーが減る一方、FTTH事業に出遅れたため、NTTのインフラを安く借りたいという動機がある。彼らの提案については、情報通信政策フォーラムで何度も討論会を開いたが、電力系の業者から「われわれは自前でやっているのにSBはなぜできないのか」と問い詰められ、SB側は答えられなかった。今度の提案も、実現する可能性はゼロだろう。

しかし注目に値するのは、孫氏が「1社でもアクセス回線会社にコミットする」と表明したことだ。
これ以上、我々が『できるはずだ』と主張し、NTTが『できません』と反論する堂々巡りの議論をするつもりはない。一緒にやりましょうと、言っている。一緒にやらないのであれば、ソフトバンクが1社でもやる。日本のためにやってみせる。やるべきだ、ということをお伝えしたい。
その通りである。彼の提案は史上最大のベンチャー事業ともいうべきもので、リスクのきらいな国やNTTを入れてできるはずがない。私は孫社長にも直接、SBがNTTを買収するなら賛成するといった。それにはNTT法の廃止が必要だが、これは総務省も情報通信法で検討した方向だ。NTTは絶対に反対するだろうが、TOBで堂々と闘えばよい。「堂々巡り」は無用である。

ディールの規模は6~8兆円ぐらいになるが、世界の通信業界では珍しくないし、買収後の売却を考えれば、正味の規模はボーダフォンを買ったときとそう変わらない。ただSBが単独でやるのは無理だから、外資系のプライベート・エクイティと共同でやればよい。たとえば日本で案件が不足して困っているKKRなどはどうだろうか。

光ファイバーの整備には大した意味がないが、これによって資本市場が活性化すれば、孫社長のいう「成長戦略」として大きな効果がある。日本経済をだめにしている最大の原因は、古い会社に古い経営者が居座って新陳代謝が進まないことだから、企業コントロールの市場によって経営革新を行なうことが成長率を高める王道である。