私はiPhoneとiPadを使っているが、このごろ(おそらくiPhoneが増えたせいで)非常につながりにくくなった。きょうも夜8時ごろ、山手線で東京から品川までつながらなかった。山奥やビルの中でつながりにくいのは「電波の飛ばない2GHz帯しか使えないからだ」というソフトバンクの説明も成り立つが、山手線でつながらないのは、海部美知氏の指摘するように、基地局の設備投資をケチっているからとしか考えられない。

孫正義社長は、iPhoneやiPadにSIMロックをかける理由を「800MHz帯が使えないハンディキャップを埋め合わせるため」というが、NTTドコモも反論するように、基地局の密度の高い都市部では800MHzが有利ということはない。東京では一つの基地局でカバーするユーザーが非常に多く、半径数百メートルでチャンネルがいっぱいになってしまうから、つながりやすさを決めるのは電波の到達距離ではなく基地局の密度である。

ところがドコモの基地局が7万6000局あるのに対して、ソフトバンクは3万8000局とその半分。あとの1万8000局は「中継局」と呼ばれる簡易アンテナだ。いまソフトバンクが配っているフェムトセルもこれと同じで、基地局の代わりにはならない。

基地局の不足をFTTHでカバーしようという「アクセス回線会社」はナンセンスである。フェムトセルを無料で配布してもユーザーに設置するインセンティブがないので、普及するとは思えない。おまけにNTTの回線にソフトバンクが「ただ乗り」することには批判が強く、技術的にも問題が多い。

ソフトバンクが今やるべきなのは政策提言ではなく、iPhone/iPadで激増したデータ量に対応する基地局を建設することだ。理論的には、セルを増やせばデータ量はいくらでも増やせる。ドコモはソフトバンクのような泣き言をいわないで、設備投資をしている。基地局を結ぶ中継系の光ファイバーは、無線キャリアが自分で引くものだ。これはアクセス系のFTTHとは無関係で、ましてやNTTの構造分離はまったく意味がない。

まぁ自社の設備投資の不足を「国策」の責任にすりかえてSIMロックを続ける「坂本龍馬」には何をいっても無駄だと思うので、そろそろiPhoneをドコモのAPモードに替えよう。