先日のニコニコ動画について「小沢べったりだ」とか「政治とカネの問題を免罪するのか」といったコメントがくるので、補足しておこう。

JBPressにも書いたことだが、大手メディアの世論調査とネット世論が大きく違う原因は、この政治とカネの問題だろう。マスコミの世論調査で何も実績のない菅首相を支持する人が65%にのぼるのは、「金に汚い小沢はいやだ」という消極的支持だと思われる。しかしニューズウィークも指摘するように、政治資金収支報告書の虚偽記載ぐらいのことでメディアが大騒ぎして進退問題になるのは、世界的にみても異常である。

もちろんゼネコンから政治資金をもらって利益誘導するのはよくないが、それはカネをもらうからではない。公益のために行なうべき公共事業の決定が、私的な利益のためにゆがめられるからである。この観点からいうと、政治献金よりも圧力団体のほうが有害だ。民主党政権に最大の影響を及ぼしているのは、労働組合である。連合は労働市場改革や公務員制度改革を阻害し、派遣労働の規制強化など非正社員の生活を悪化させる政策を要求してきた。その弊害は、ダムの箇所づけよりはるかに大きい。

しかし労働組合や医師会や特定郵便局長会などの政治的圧力は、いかに国民経済に大きな被害をもたらすものであっても、合法的であるかぎり批判されない。問題になるのは、日歯連のように違法な裏金を渡したときだけである。だから本当に政治力のある圧力団体は政治資金を渡す必要はなく、票のとりまとめをするだけで政策を左右できる。政治家にとっては、政治資金よりも票のほうが重要だからである。

にもかかわらず、政治的なゆがみがはるかに小さい政治資金の問題が騒がれるのは、それが刑事事件になるからだ。日本のマスコミでは政治家の取材は政治部がやるが、汚職事件の取材は社会部がやる奇妙な分業がある。政治的圧力によって政策がゆがめられても、政治部はそれを悪として糾弾できない。検察が立件して初めて、社会部が追及できるのだ。しかも政治家のスキャンダルを独自取材で報じると名誉毀損などで反撃されるが、刑事事件になればその心配はない。

つまりここでも「わかりにくい大きな問題」よりも「わかりやすい小さな問題」をたたくメディア・バイアスが作用しているのである。小沢氏の政策はバラマキ的で古く、その政治手法にも強権的だという批判がつきまとう。そういう批判には意味があるが、政治資金規正法違反で起訴される可能性があるから首相にふさわしくないというのは筋が通らない。そろそろ政治とカネ騒ぎは卒業して、政治家の評価は政策と能力だけですべきである。