今週の週刊朝日(p.136)にこういう見出しがある、とツイッターで紹介したら大騒ぎになっているので、正確に引用しておこう。このインタビューで、税調の専門家委員長である神野直彦氏は、こうのべている:
記者「900兆円もの借金をどうやって返していくのか」
神野「実は、900兆円は返さなくていいんです。歴史的にも論理的にも、借金を返した国はないのです。[・・・]利払いだけをし、借り換えでしのぐしかない。他の国から借金した外国債ならば踏み倒せば国際紛争になるが、日本の場合は95%が内国債なので安心です。要は、夫が妻から借りているようなものです。デフォルトしたアルゼンチンとは違います」
テクニカルにいえば、神野氏は「踏み倒せばいい」とは言っていないが、広辞苑によれば「踏み倒す」とは「借金を払わないままにする」ことだから、「返さなくていい」というのは「踏み倒してもいい」と同義である。

国家でも企業でも個人でも、すべての債権者が債券を保有し続ければ、債務がいくら増えても借り換え続けることができる。しかし問題は、債務者に返済能力があるかどうかだ。債務超過になっている場合には、他の債権者が返済を求めると自分が取り残されるので、返済を求めることが合理的になる。そういう債権者が増えると、債務者は破産してデフォルトが起こる。政府の場合、徴税権があるので債務超過になってもいいが、その場合は徴税能力があるかどうかが問題になる。

「通貨はいくらでも増発できるから内国債はデフォルトにならない」というのはナンセンスで、インフレによって実質的なデフォルトが起こる。800年間のデータをもとにしてReinhart-Rogoffが指摘するように、政府債務のデフォルトやハイパーインフレはありふれた現象で、先進国でもよく起こる(日本でも起こった)。デフォルトが起こるかどうかの要因で決定的なのは政府の安定性(徴税能力)で、内国債か外債かはほとんど関係ない。

こんなことは普通の財政学でも金融論でも習う初歩的な話だが、マル経にはこの程度の常識もないのだろうか。もしかすると、神野氏はこういう発言で国債の暴落を誘発し、「革命」を起こそうとしているのかもしれない。それはそれで興味ある戦術だが・・・