バーナンキの議会証言は、追加緩和に慎重な姿勢を示した。もちろんクルーグマンは「バーナンキはわかってない」と毒づき、「財政赤字なんかにかまわず、政府はもっと激しく金を使え」と主張するが、他のエコノミストは「こんなもんだろう」と達観している。

ロゴフなどの主流派は「パニックになって財政出動するなんて愚かなこと。それより財政規律を取り戻せ」と説いている。これに対してケインジアンは「長期金利は2パーセント程度で、財政危機はフィクションだ」と反論するが、ファーガソンは歴史的にみて、現在の政府債務は戦時下と同じ規模で、その結末は債務不履行か大インフレしかないと説く。

『市場の変相』の著者エラリアンは、FRBのとりうる選択肢を5つあげている:
  • 長期にわたって金利を低く据え置く「時間軸政策」
  • 準備預金の金利を下げる
  • 非金融部門への融資を増やす「金融産業政策」
  • 資産の買い入れを増やす「量的緩和」
  • 金利に上限を設ける
これらの政策に一定の効果はあるだろうが、激しいdeleveragingが行なわれ、構造的ゆがみが調整の障壁になっている市場で、あまり無茶なことをすると大きなダメージが生じて意図せざる結果になる、とエラリアンは慎重な見方をとっている。

・・・これってどこかの国で10年ぐらい前に見た光景じゃないだろうか。しかも当時、デフレは日銀の愚かな政策のせいで、アメリカでは起こらないと断言していたバーナンキが、当時の日銀とそっくりの「臆病」な政策をとり、クルーグマンに"Domo arigato, Bernanke-san"と皮肉(?)をいわれている。

要するに、どこの国でも中央銀行は「魔法の杖」をもってはいないということだろう。金融市場や実体経済に大規模な「コーディネーションの失敗」が残っている状態では、金利や通貨供給などの在来型の政策手段の効果は限られている。

ただ日米で一つだけ違う点がある。「中央銀行がインフレ目標を設定して無制限に金をばらまけ」と主張する自称エコノミストが、アメリカには一人もいないことだ。この点では、彼らのほうが一歩進んでいる。