2010年07月03日 23:30
経済

政府債務はいくらあるのか

来週の週刊ダイヤモンドの特集は「消費税 ウソ/ホント」。菅首相の発言がぶれる中、有権者がちゃんとした知識をもつには時宜を得た特集だ。特におもしろいのは、財政論議の出発点になる「政府債務」が本当はいくらで、それがいつまで維持可能かという計算である。

政府債務にもいろいろな計算の仕方があって、IMF基準の総政府債務は973兆円だが、財務省がよく使う国及び地方の長期債務は862兆円で、首相はこれを使っている。ただ、これはグロスの数字で、みんなの党などは「ネットの債務はもっと少ない」と主張している。しかし政府の金融資産のうち、主なものは次の3つだ:
  1. 対外証券投資(主として米国債):110兆円
  2. 株式・出資金:99兆円
  3. 年金基金:200兆円
このうち、問題なく「埋蔵金」とみなせるのは、為替介入で買った1だけだ。2は特殊法人などに出資した資金で、その出資先を清算しないと返ってこないし、清算すると資産はかなり劣化している可能性が高い。3は債務返済に流用できないし、将来の給付を債務と考えると、年金基金は約500兆円の債務超過である。したがって実質的な純債務は1100兆円を超すが、年金債務を無視して1と2を862兆円から引いても、純債務は653兆円でGDP比1.29。これでも堂々たる先進国ワーストワンだ。

他方、個人金融資産から負債や株式・社債などを引いた純資産は924兆円。純債務との差(資産超過)は271兆円だから、今年の国債発行額44兆円(+金利)で割ると、あと6年で使い切る計算になる。ただ金融資産は団塊世代が引退する2012年から減少に向かうと推定されるので、5年以内に「Xデー」が来る可能性もある。実際には、そのかなり前から外債の募集が始まり、金利が上がり始めるだろう。

・・・というわけで、実はあまり余裕はない。国債の75%は国内の金融機関が保有しているので、大規模な資本逃避は考えにくく、外資系ファンドの空売りにも勝ち抜いてきたが、金利が大きく上昇すると、邦銀には多額の評価損が発生する。4%になると、三菱UFJの評価損は1兆円を超す。

ただ本質的な問題は国債の消化ではなく、世代間の負担の不公平である。これは増税を先送りするにつれて確実に拡大し、若年層の消費を抑制する効果は無視できないだろう。


トラックバックURL

トラックバック一覧

  1. 1.

    [雑文]借金塗れ

    政府債務はいくらあるのか 池田信夫 blog : 政府債務はいくらあるのか 金が無いと困るのは個人でも国でも変わらんなー。

  2. 2.

    池田信夫 blog : 政府債務はいくらあるのか

    池田信夫 blog : 政府債務はいくらあるのか

  3. 3.

    日露戦争の時代に逆戻り?

    ちょっと前の話題になりますが、池田先生のブログでXデーの予測が発表されました。こ

  4. 4.

    http://zuiyue.air-nifty.com/blog/2010/08/post-e151.html

    わたくしが考える財政破綻のパターンというのがあります。 まず、財政破綻は、インフ

コメント一覧

  1. 1.
    • harappa5
    • 2010年07月04日 00:15

    おそらく「若者」の典型である私から見ると、もう「若者」ではない池田信夫さんが、「世代間問題」を取り上げていて嬉しく思います。あなたの立場なら年配が有利になるようなポジション・トークをした方が合理的ですから。多分、このままシステムが変わらない可能性が高いと思いますが、プログ読者の意見はいかがでしょうか?

  2. 2.
    • marug3c6jgj
    • 2010年07月04日 02:07

    「地動説」の議論のよれば、ベテルギウスは恒星というシステムの手続き上そろそろ超新星爆発を起こして消滅するということはわかっているんだけど、それが西暦何年になるのかということは全く判らないし、もしそれが既知の「文明的スケール」でなかった場合、結局「ベテルギウスは爆発しない」という理論が正しいことになる…

  3. 3.

    みんなの党比例区の桜内ふみき候補が本年度予算ベースで「国ナビ」に3年先まで試算させたところ、このまま行けばほぼ破綻しているという結論に至っています。この計算はおそらく団塊世代の移動を加味していないにも関わらず、です。渡辺喜美は高橋洋一にこのへんを任せっきりのような気がしますが、党内でも異論はあるでしょう。

    ただ、仰るように負債の大部分は年金の積立不足なので、直近の年金給付も含めた抜本改革ができれば、かなり持ちこたえるんじゃないでしょうか?もちろんそれは現在大量の票を握っている老人世代に我慢をさせて、ゼロ票の子供を救う作業なので、政治的には非常に難しそうです。でも、冷静になって議論しなければ破綻への道はすぐそばまで来てると思います。

    田中角栄以来の老人&地方バラマキが日本に仕掛けられた時限爆弾であり、我が国の一番の問題は財政を痛める過剰福祉だと思うのですが、なかなか実感してもらえずお手上げ状態です。まあ、私は日々「老人を甘やかしすぎだ」と言っては白い目で見られていますが。

  4. 4.
    • kkay1974
    • 2010年07月04日 09:31

    当然、老人から亡くなるので、いつかは負債の受益者は多数派から少数派に転じる。その転換期に、それまで不利益を被っていた世代は一気に自分たちの損失を取り返そうとすると予想できる。若い世代が年配世代に牙をむく。

    年長者を敬うという日本人の道徳観へもダメージが大きいと思われる。もっと言えば既に亡くなった先祖への敬意も薄れるかもしれない。そうなると日本人の心を繋ぎ止めているものが失われて、なかば精神的には日本は崩壊するのではないだろうか。

    既に「老害」というスラングが生まれているのは、上述のシナリオの初期段階を迎えているのではないか。

  5. 5.

    ツイッターで、絶対に儲かる話を、他人にベラベラと
    論じている方々がいらっしゃいます。
    「国債絶対安全論者」ですね。

    彼らほどの善人は居ないでしょう。絶対に儲かり安全な
    日本国債を自ら買う事もせず、静かに安全性を説明
    しているのですから。

    あまりにも献身的なので、「自ら国債を買っても
    良いのですよ」と励ましておきました。

  6. 6.
    • 池田信夫
    • 2010年07月04日 10:28

    なお、この号には私のサンデルの本の書評が出ています。

  7. 7.

    最近、サンデルをよく見聞きする今日この頃、要するに、パイの切り分けに、価値から中立な「客観的正義」が存在するのか否かが知りたい人達が沢山いるようです。平易に直せばパイの切り分けに必要な物差し作りが、可能か否かですよね?物差し作りが実現すれば、農業革命・産業革命以来の人類史に残る革命が実現するかもしれません。解は無理でも近似値は存在するのでは、重要な論点の一つであることは、間違いありません。


    管理通貨制度下の現在、国債の償還問題は不毛な議論ばかりで聞くに堪えない話ばかりです。他国通貨建て債務ではないので、領土の割譲もなければ名目上の不履行もその気になれば回避できます。とは言え、このまま債務残高を増やし続けることが広義の国益から望ましいか否かは、空からお金を撒け論者に聞いてみたら面白い答えが返ってきそうです。

    一国の経済規模を100とした場合、望ましい貨幣流通残高・貨幣流通残高を除くマネタリーベース・マネーストックの割合(マーシャルK)を定義するのであれば、楽しい議論が出来そうです!!!!

  8. 8.
    • harunaakiha
    • 2010年07月04日 12:45

    「逃げ切る」 といっても、必ずどこかの世代が殿を務めることになる。 今はまだ食えてるからいいけど、徐々に貧しくなり、不満の力はたまっていくでしょう。

    ダムが決壊したとき、殿だったらどうしよう? とか思わないんですかね。 老人は今のうちから若者に媚うったほうがいいんじゃない。

  9. 9.

    5 池田先生、いつも、大変勉強になります、、、
    一つ質問させてください、、、
    >問題は世代間の負担の不公平である。これは増税を先送りするにつれて確実に拡大し、、、
    ですが、増税をすれば、世代間の不公平は解消に向かうのでしょうか?
    今までは、「財政健全化→増税→景気悪化→選挙対策→急場しのぎの補正予算編成」のサイクルで、増税は世代間の不公平を解消しなかったと思っていますが、この考え方がそもそも間違っているのでしょうか?





メルマガ配信中
logo-kobetsu


連絡先
記事検索
アゴラ 最新記事
月別アーカイブ
QRコード
QRコード
Creative Commons


  • ライブドアブログ
2