2010年07月01日 07:56
IT

新・電波利権

アゴラブックスの6月の新刊。4年前に新潮新書で出た旧版がいまだに息長く売れているので、データを大幅にアップデートして電子版のみで新版を出した。定価315円だが、最初の部分は立ち読みできる。購入すれば、PDF版も読める。

きのうのホリエモンとの対談でも電波行政の話が出たので、少し補足しておこう。彼もいうように、日本の「電波社会主義」は、立法と行政と司法の三権をすべて握る日本の官僚機構の象徴的存在だ。民主党が周波数オークションを提唱しても、電波部はかたくなに受け付けない。

これは検察が官僚機構にチャレンジする政治家をねらうのと似ている。岸信介は、CIAの工作員として受け取った巨額の報酬で自民党の政治家を買収して首相になり、数々の疑惑が噂されたが、摘発されなかった。佐藤栄作もCIAから金を受け取っていたが、造船疑獄では指揮権発動で救われた。他方、田中角栄や小沢一郎のように「政治主導」をねらう政治家は検察にやられる。いくら金と権力をもっていても、彼らのような党人派は「官治国家」日本では傍流なのだ。

この明治以来の国家資本主義が、日本の挫折の根本原因である。それは先進国に追いつく局面では、資本を戦略部門に集中して急速な成長を実現できるが、キャッチアップが終わってもやめることができない。それをコントロールする「外部」をもたないからだ。「国のかたちを変える」と所信表明でのべた鳩山元首相には問題意識だけはあったが、菅首相は「政治主導」を引っ込めてしまった。乗数効果のときのように官僚に意地悪されると、彼らに対抗する情報インフラをもっていない民主党は無力であることを知ったからだろう。

電波行政は、こうした国家資本主義の最後の砦である。他の分野では市場経済に譲歩した官僚機構も、電波だけは離そうとしない。それは電波がメディアをコントロールする武器だからである。「第四権力」などとおだてられても、霞ヶ関の恥部である電波利権に沈黙を守るテレビ・新聞は、しょせん権力の犬だ。彼らに「第一権力」霞ヶ関を牽制する機能は期待できない。これが日本の変われない原因である。



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コメント一覧

  1. 1.
    • kazukiv
    • 2010年07月01日 10:23

    岸信介とCIAとの関係は知らなかったです。
    大変参考になりました。
    小泉首相はなぜ摘発されなかったのでしょう。
    彼は本流だったのでしょうか?
    自分がリアルタイムで知っている政治家では、彼は化物のように強い政治家だったと思います。
    本については私は紙の本の方が好きなので、普通の本の方がありがたいです。
    携帯嫌いで周りからは変人扱いされているので、あまり参考にはならないと思いますが。。。
    ただ電波の話は興味が出てきました。
    (結局アマゾンで古い方にしました。)

  2. 2.
    • アンチ巨人、アンチナベツネ
    • 2010年07月02日 08:40

    私は池田先生の言論の崇拝者なのですが(つい最近、希望を捨てる勇気を購入しましたが・・。少し遅れていますが・・。)、今回、初めて?と感じました。以前、先生ご自身が「規制当局より、規制される企業体のほうが社会上、情報上で優位な立場にあり、当局のほうが企業の情報操作により、その企業の利益を守ってしまうreguratoly captureだ。」と言われていましたが・・。私は学生寮時代の友人(各種大学がいる。)が国家上級職、民放テレビ局に複数行っていますが、個々人はどうみても社会上、経済上においても世俗上においてもテレビ人のほうが格段に恵まれていた(今の新入社員は少し変わったかも?)ように思います。電波部の役人も政治家も本当に第一権力としてメディアを操作できたのでしょうか。

  3. 3.

    >コントロールする「外部」
    韓国がうまくいったのはやはり対外債務の存在が政府に株主的存在を意識させたからでしょうか?
    北朝鮮にしろ日本にしろ、自国だけで今のところ財政が運営できてる国は考えが「お山の大将」になりやすいのかもしれませんね。
    ただ、なんのかんのと言っても「国債を買う買わない」といった間接的な意思表明しかできないと、ギリシャのように破綻危機を起こす。
    僕は参議院を廃止して、国債を購入してくれた額に応じて投票権を与える国家の株主総会的なものを作り、衆議院と意見をぶつからせるような方式にしてはと思うのですが。(本来お金持ちで構成されてた貴族院とはそういう性格のものだったはず)

  4. 4.
    • sfdx
    • 2010年07月02日 21:04

    > 「政治主導」をねらう政治家は検察にやられる。
    検察ではないですが, 古い例だと原敬ですね. 状況証拠はあるものの, 背後関係は今も謎です.
    今年初めBLOGOSで読んだブログの中には, 検察を正義の味方扱いし, 少しでも怪しい政治家はどんどんやってしまえと書いているのもありました. 昭和初期の政治家蔑視・軍人賛美の論調と同じではないかとコメントしたら, 反映されませんでした.
    > 官僚に意地悪されると、彼らに対抗する情報インフラをもっていない民主党は無力であることを知ったからだろう。
    金美齢さんがそこまで言って委員会で話したことによると, 民進党政権時代, 官僚から徹底的なサボタージュを受けたそうです. ただし, 金さんは一貫して反民主党です.





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