BLOGOS経由で、朝日新聞の安井孝之という編集委員が次のような主張をしていることを知った:
アップル(米)6.3% ノキア(フィンランド)2.4% サムスン電子(韓国)1.7% パナソニック(日本)1.6% ソニー(同)1.3%。

世界のエレクトロニクス企業の、納税額の売上高比率を計算してみた。この数字を眺めると、日本の法人課税(地方税を含む)は重い、という「常識」とは異なる姿が見える。[・・・]税率を下げればiPadが生まれる保証もない。5%の法人税率下げで1兆円の財源がいる。減税の費用対効果を見極める「仕分け作業」が必要だ。
経済学部の試験で「このコラムの誤りを指摘せよ」という問題を出したら、学生でもすぐわかるだろう。

日本企業の納税額が少ないのはもうかってないからで、税率とは関係ない。法人税が何%だろうと(100%でないかぎり)、国内企業は税率を所与として利潤を最大化するので、法人税率は国内投資に中立である。こんなことは財政学の初歩だ。問題は多国籍企業の場合である。パナソニックは、今年の新卒採用の8割を海外採用にした。グローバル企業が税引き後のキャッシュフローを最大化すると、税率の高い国から資本逃避が増える。

ドメスティックな朝日新聞は知らないだろうが、日本企業は世界で闘っており、外資系企業もなるべく日本で資産をもたないように金融技術を駆使しているのだ。税率が高いのに税収が少ないのは、こうした資本逃避に加えて、自営業の所得捕捉率が低いために赤字法人が7割を超え、租税特別措置で抜け穴だらけになっているからだ。その穴をふさがないで税率を高くしても、グローバル企業から先に逃げてゆく。ユニクロも、2012年から公用語を英語にする。

納税額を利益ではなく売上高の比率で比べて低く見せるという奇妙な計算を、この記者が思いついたのかどうか疑わしい。財務省が「レクチャー」して、この数字を教えたのではないか。日本経済が破滅しても税収の確保のほうが大事だという主税局の工作が始まったのかもしれない。税調の専門家委員の大部分はマル経なので、混乱が予想される。こんな財務省の工作員のような記者こそ「仕分け」が必要だ。