菅首相によれば、日産自動車のカルロス・ゴーン社長の給料が高いのは「首切りがうまかったからだ」という。これは小野善康氏の次の話の受け売りだろう:
[ゴーン]社長就任後の3年間で営業利益は急速に伸びたが、売上高はほぼ横ばいであった。[・・・]このことは、日産の急速な回復が、自動車の販売を増やして多くの人に便益を提供したからではなく、2万人規模の大量解雇などで大幅なコスト削減を行い、効率化を図ったためであることを如実に示している。(『不況のメカニズム』p.182)
この文章の横にある図を見ると、「営業利益」が「売上高」を上回っているが、そんなことはありえないので、よく見ると座標軸が一桁違う。

これをそろえて描くと、次の図のようになる。売り上げの伸びが営業利益の伸びを大幅に上回っていることは明らかだろう。つまり日産の業績が回復した最大の原因は「大量解雇」ではなく、円安で輸出が大幅に増えたからなのだ。

nissan
日産の売上高と営業利益(億円)

不況のときリストラがいけないのなら、いつすればいいのだろうか。業績が回復してから解雇する経営者がいたら、教えてほしいものだ。日産がリストラしていなかったら倒産して、もっと多くの人が職を失っただろう。首切りが「合成の誤謬」になるという話も、なつかしいケインズの寓話だが、実際に大恐慌で起こったのは実質賃金の切り上げだった。不況だろうと好況だろうと、賃金を下げると雇用は増えるのである。

一国の首相が、企業の経営者を名指しで「首切り上手」などというのは、ほとんど名誉毀損である。菅氏はいつもこの嘘を繰り返しているようなので、日産の広報部は官邸に抗議したほうがいいのではないか。