日本振興銀行の事件は、家宅捜索や木村剛前会長の事情聴取に発展した。直接の容疑である検査妨害はともかく、問題のコアである出資法違反については疑問が多い。金融庁によると、振興銀行が貸金業者から約100億円の債権を買い取る際、約1ヶ月後に貸金業者(SFCG)が買い戻す契約を結んだうえ、買い取り手数料を受け取ったことが「事実上の金銭貸借」であり、出資法の上限金利(年29.2%)を超える年45.7%の金利を受け取った違法行為だという。しかし金融業界では、こうしたビジネスは珍しいものではない。

投資銀行が法人から「手数料」を取って行なっているビジネスや、証券化商品によって行なっている取引には、もっとハイリスク・ハイリターンのものがある。こうした取引は「金銭貸借」とみなされないように契約を工夫したり、仕組債などで複雑化して取引相手を隠したりしているので引っかからないだけだ。

今回のケースも、1ヶ月後に返済したということは一時的な資金繰りの問題であり、振興銀行が資金を融通しなかったら、SFCGは倒産していたかもしれない。相手もプロなのだから合意の上での取引であり、倒産をまぬがれたのだから誰も損をしていない。振興銀行は、感謝こそされても非難されるいわれはない。金融庁がこれを金銭貸借とみなした法解釈が妥当なのかどうかは、争う余地があろう。

さらに奇妙なのは、金融検査は10ヶ月前から行なわれていたのに、強制捜査が貸金業法の総量規制が始まるタイミングと重なっていることだ。木村氏はかねてから「貸金業法が官製不況の元凶だ」と金融庁を強く批判していた。警察がこの時期に強制捜査に踏み切ったのは、見せしめ的な「国策捜査」のにおいを感じる。こういう事件が続くと、ただでさえリスク回避的な日本の金融業界がますます保守的になり、日本経済はだめになってゆくのではないか。