iPadの発売に合わせて、各社から携帯用Wi-Fiモデムが出てきた。eモバイルのほか、NTTドコモのSIMカードで使えるものや日本通信のSIMフリー機がある。iPhoneをもっている人は、iPadのWi-Fiモデル(3Gモデルより1万円以上安い)を買ってこのWi-Fiモデムで両方に使えば、通信料金(パケット定額)が1人分ですみ、PCなどにも使える。

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iPadはWi-Fiにつながる場所ではそれを優先し、つながらない場所では3Gに切り替わるが、Wi-Fiの最高速度が54Mbpsなのに対して、3Gは7.2Mbps。大きな画像になると、通信速度の差ははっきり出る。今後、日本でもIEEE802.11nの利用が許可されれば、最大600Mbps(実効速度100Mbps)が出る。

こうなると誰でも考えるのは、Wi-Fiで公衆無線ネットワークが組めないかということだろう。世界的にはそういうネットワークがあり、FONは日本でも無線ルータをiPadに同梱してネットワークを拡大している。ライブドアも、首都圏でWi-Fiネットワークを構築している。

現在の携帯電話は、コモンキャリアを中心とした高コストの電話網だ。電波法の制限さえなければ、Wi-Fiのほうが速度においてもコストにおいても有利である。多くのルータをリレーして通信するので、品質を完全に保証できないが、これは有線インターネットと同じで、ルータの数を増やせば解決できる。つまり今は、無線インターネット革命の前夜なのである。

2000年代前半にも、無線インターネット革命が試みられたことがあったが、与えられた周波数が2.4GHz帯や5GHz帯という物理的に不利な帯域(到達範囲が狭い)だったため、公衆無線ネットワークを構築することはできなかった。しかし「原口ビジョン2」で明記されたホワイトスペースの利用が実現すれば、全国で約200MHzの帯域が利用可能になる。

これは到達範囲の広いUHF帯であり、しかも10チャンネル取れるから干渉が少なく、公衆無線が成り立つ可能性がある。アメリカではFCCがUHF帯のホワイトスペースを免許不要帯に割り当てることを決め、イギリスでもOfComが「デジタル化の配当」として同様の方針を決めた。日本でも、評判の悪い地デジの社会的意義を高めるために、総務省はホワイトスペースを「地デジの配当」として積極的に推進してはどうだろうか。

原理的には、Wi-Fiの基地局を増やせば全国をカバーでき、通信速度も光ファイバー並みに上げることができる。免許不要で100Mbps級の無線通信が全国どこでも可能になれば、新しい通信業者が参入してプラットフォーム競争が始まり、FTTHは不要になるかもしれない。FCCは今後10年間に500MHzの帯域を開放する方針を表明しているが、通信業者は「それでは足りない」と主張している。FCCの予測によれば、今後5年間で無線のデータ量は50倍になるからだ。

これに対応するために必要なのは、電波の開放とテレビ局の整理である。地方民放の経営は行き詰まり、整理統合は避けられない。彼らの帯域を第二市場で通信業者に売却すれば、会社を整理する資金になろう。中継局をSFNにして520MHz以下に集約すれば、UHF帯はホワイトスペースではなく空き帯域になり、LTEなどにも使える。いま必要なのは「ユニバーサルサービス」の拡大ではなく、自由な競争を可能にして投資を促進する電波ビッグバンである。