総務省の「電波利用料制度に関する専門調査会」のヒアリングで、通信事業者はそろって周波数オークションに反対した。NTTドコモが「金額が高騰する恐れがあり、事業継続性の観点から反対」というのはともかく、改革派を自称するソフトバンクモバイルが「巨大企業がますます大きくなる」という理由で反対しているのは、ナンセンスというしかない。

まずFAQでも説明したことだが、オークションによって通信料金が上がることは理論的にありえず、現実にもそういうことは起こっていない。次の図は2007年の携帯電話料金の国際比較(総務省調べ)だが、群を抜いて高いのはオークションをやらなかったフランスで、総務省の非難してやまない2000年の3Gオークションで最高値をつけたドイツの月額料金は、フランスの1/4である。

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ドコモのいう「免許費用がかかる」というのは当たり前だ。では「不動産の費用がかかるから、汐留の国有地は無料で払い下げよう」ということになるのか。日本最大級の利益を上げているドコモの「事業継続性」に問題が起こるような価格で落札できる業者は、他にはいない。むしろ美人投票でやると、2.5GHz帯のように意図的にドコモが外されるリスクのほうが大きい。

「金持ち優遇だ」というソフトバンクの主張は、1兆7500億円でボーダフォンを買収した会社のいうこととは思えない。オークションではスロットに分割するので、NTTドコモがすべて買い占めることはできない。今の700MHz帯のように40MHzしかないと、ドコモとKDDIに取られる可能性もあるが、ITSやFPUをどかせて100MHzあければ、20MHz×5スロット取れるので、確実にソフトバンクが落札できる。免許料はアメリカ並みの単価と想定しても2600億円程度で、ボーダフォンよりはるかに安い。

「周波数オークションでバカ高い免許料がつく」というのは神話で、2000年のオークションでも英独以外ではそれほど高騰しなかった。アメリカでは、最近は3億ドル/MHz程度で落ち着いている。SIMロックの禁止などの付帯条件をつけるオープン周波数オークションを行なえば、免許料は下げることができる。企業買収という「闇市場」があるのに、オークションという「公式市場」がないことがおかしいのだ。

電波利用料は周波数オークションを導入しない代替措置として創設されたものだが、有効利用する(多くの無線局を使う)業者ほど高い料金を払う不合理な制度で、オークションの代わりにはならない。オークションの目的は業者から免許料を取ることではなく、寡占化しやすい携帯電話市場に新しい業者がチャレンジし、新規参入によって料金・サービスの競争を起こすことだからである。

この意味では、既存の通信業者がそろってオークションに反対するのは合理的ともいえる。孫正義氏も、かつてIT戦略会議では村井純氏とともに、周波数オークションの実施を主張していたが、自分が電波を取ったらオークションに反対するのは、ご都合主義もはなはだしい。日本の電波行政は、電波社会主義というより、特権階級の既得権を守る電波封建制ともいうべきものだ。それを打破しないかぎり、「電波開国」もできないのである。