きのうの参議院予算委員会でこういう問答が行なわれた(ネット中継2:00~)

菅財務相「1兆円の予算を使って1兆円の効果しかない公共事業はだめだ」
林芳正(自民党)「では子ども手当の乗数効果はどれぐらいか」
長妻厚労相「子ども手当は実質GDPを0.2%押し上げるが、乗数効果はわからない」
「GDPの増分を財政支出で割れば乗数効果は出るだろう」
仙谷国家戦略担当相「1以上であることは間違いない。幼保一体化すれば・・・(ヤジで意味不明)」
(中断。3分後に再開)
「子ども手当の消費性向は0.7程度。定額給付金は0.3ぐらいだった」
「消費性向と乗数効果の違いを説明してください」
(中断。3分後に再開)
「乗数効果の詳細な計算はまだしていない」
「計算すればわかるだろう。消費性向と乗数効果の関係は?」
「1兆円の事業に金を使ったとき1.3兆円の効果があれば、乗数効果は1.3・・・」
(中断。1分後に再開)
「消費性向が0.7ということは1を切っている。財政支出より低いのだから、財政支出を切って子ども手当にしたら、景気への効果はマイナスになるのではないか?」
(中断。1分後に再開)
「子ども手当の効果は1以下だが、その他の効果がある。子育てで働けない人が働けるとか少子化が防げるとか・・・」
「市場が暗くなるといけないので、もうやめる」

質問している林氏も勘違いしている(消費性向と混同している)が、乗数効果というのは、政府支出を1とし、限界消費性向をc(<1)とすると、財政政策の波及効果が

1+1×c+1×c2+・・・=1/(1-c)

となることだ。これは理科系の菅氏は当然ご存じの無限等比級数の和の公式で、子ども手当の場合には、消費性向が0.7だと初項が0.7なので、乗数効果は0.7/0.3=2.3になる。林氏の質問はこれを言おうとしたものだろうが、「乗数が1以下」などというので、答弁する側も混乱している。

これは大学1年生の春学期で習う超初歩的なマクロ経済学の常識で、菅氏のような答案を出したら不可である。乗数も知らない落第生が、7兆円の景気対策を出して「成長戦略」を立案しているのは恐るべきことだ。やっぱり「官僚主導」でやったほうがいいんじゃないの。