マサチューセッツ州の上院補欠選挙は、オバマ政権に大きな打撃だった。それはフィリバスターを止められなくなっただけではなく、民主党の金城湯池で「小さな政府」を求める運動が勝利したからだ、と今週のEconomistは報じている。各国政府が行なった銀行救済によって、金融危機は財政危機に変わろうとしているのだ。

アメリカの保守主義は、各州あるいは各個人の独立を国家から守る建国の精神であり、そのコアにあるのは国家に対する懐疑である。それに対して自民党の保守主義は、政府がすべてを解決すると考える家父長主義と、明治時代に戻ろうとする国粋主義だ。民主党の掲げる「第三の道」の実態も、旧態依然の大きな政府である。日本には、小さな政府を掲げる党がないのだ。大きな政府には三つの問題がある。
  1. 政府債務の維持可能性
  2. 世代間の負担の不公平
  3. 公共投資の非効率性
このうち「財政赤字はフィクションだ」派は、もっぱら1の論点ばかりいうが、それは本質的な問題ではない。もしも永遠に政府債務が維持可能だとしても、その償還のための増税は避けられないので、2の問題は発生する。彼らは政府支出によってすべての問題が解決すると信じているようだが、最近の補正予算では財政の乗数効果は1を下回り、マンデル=フレミング効果とあいまって、長期的にはほとんどキャンセルされてしまう。

最大の問題は3である。1960年代までは、公共投資の収益率は民間投資を上回ったと推定されている。新幹線や東名高速などの投資は民間企業ではできないので、成長を促進する効果があった。しかし70年代以降の「国土の均衡ある発展」を理由にした地方への公共投資の収益率はきわめて低く、これが日本の成長率が低下した大きな原因だ。90年代の小渕政権以降のバラマキ公共事業は、人口を地方に逆流させて反生産的だった。

成長理論の実証研究によれば、政府のサイズと成長率には強い逆相関がある。これは公共投資が民間投資をクラウディングアウトし、平均投資効率を下げることが原因と考えられる。したがって成長率を上げるには、政府のサイズを小さくして民間投資を促進することが不可欠である。ところが鳩山首相は「新自由主義」を是正して「やさしい政府」をめざしているようにみえる。このアジェンダ設定の誤りが民主党政権の最大の問題である。

日本経済が苦境を脱却するための答はきわめて複雑で困難だが、その問題は明白だ。成長率を引き上げることが最優先であり、この問題が解決しないかぎり、他の問題はすべて解けない。ところが鳩山政権は、再分配や雇用問題などの派生的な問題から解こうとしているため、矛盾だらけの政策しか出てこないのだ。間違った問題をいくら考えても、正しい答は絶対に出てこない。Economist誌もいうように、現在の世界各国が直面している最大の問題は、大きくなりすぎた政府のサイズを適正な規模に縮小することである。

追記:コメントで教えてもらったが、自民党は「フィクション」派の三橋貴明氏を参議院の比例区の候補に立てるようだ。もう勝負を捨てたのだろうか・・・