ロゴフが、欧米の金融危機対策によって大幅に増えた財政赤字が、今後の世界経済の最大の重荷になるだろうと論じている。内容は、おおむねReinhart-Rogoffの解説だが、金融危機のあとに財政危機が来るのは歴史の法則に近いという。今後は、新興国でデフォルトの危惧があるばかりでなく、先進国にもリスクがある。

大国も、通貨価値の引き下げなどを通じて、事実上のデフォルトに追い込まれた過去を持つ。たとえば、米国は1933年に、ドルの価値を金1オンス当たり21ドルから同35ドルに引き下げた。1970年代にも高インフレによって債務負担を圧縮している。政府はデフォルトではないというだろうが、一方的に通貨価値を下げることは、債権者からみれば、債務の不履行に等しい。

ちなみに、日本も過去に何度かデフォルトしている。著書でそう言及したところ、ある日本政府高官から「日本はデフォルトしていない」と訂正を求められたが、データを示したら納得してくれた(たとえば、1946年、預貯金はいったん封鎖され、封鎖預金からの払い戻しは新円で、限度は世帯員1人について100円とされた)。デフォルトというと、対外債務ばかりを想像しがちだが、対内債務のこの種のデフォルトまで含めて考えれば、大国の債務不履行はあり得ないとは断言できない。

すべての国において積極的な財政出動が絶対に必要だったのかと聞かれれば、そうではないと答えるほかない。日本などは、むしろ増税し、かつ支出を減らし、よりバランスの取れた予算を組むべきだ。

財政赤字今週のEconomistも、財政赤字を特集している。アメリカについては破局的な危機は考えにくいが、図のように日本の財政赤字は突出しており、今後の世界経済の不安定化要因になる。同誌もマイルドなインフレによる「緩慢なデフォルト」を推奨しているが、人工的にインフレを起こすのは困難だ。それは金融政策だけでは無理で、経済が完全雇用レベルに達して資金需要が出てこなければ、インフレ期待は起こらない。FRBのコーン副議長は、当分インフレ期待は出てこないと予想している。

あとは歳出削減か増税だが、前者の余地は小さい。各国が数十%の歳出削減に成功したのは戦争の直後だけで、これによって財政を再建しようというのは夢物語である。増税も政治的に困難で、「大きな政府」になって成長率を減速させるおそれがある。結局、成長率を高めて歳入を増やすことが、もっとも望ましい財政再建策なのだ。ツイッターでも、この問題についての議論が続いている。

ただしEconomist誌のいう、増税が景気後退をまねくという「日本の教訓」は誤りだ。以前の記事でも書いたように、1997年末以降の不況は消費増税によるものではなく、信用不安が原因である。これは井堀利宏氏などの実証研究でも確かめられている。当ブログは同誌の東京支局長にも読んでいただいているので、この点はぜひ東京支局から訂正してほしい。