総選挙では民主党が「革命的な変化」を強調したのに対して、自民党は保守主義の立場から「継続的変化」を主張した。これは昔から続いている論争で、歴史の教科書ではフランス革命は近代社会を生み出した偉大な出来事とされているが、バークからハイエクに至る保守主義にとっては、それは理性や人権の名のもとに大量殺戮を行ない、ロシア革命に至る「計画主義」の端緒となった大規模テロリズムだということになっている。

経済学者のほとんどは後者の立場だが、Acemoglu et al.はこの通説に挑戦し、数量経済史的な手法でバークが誤っていたと主張する。彼らは当時の人口データを使って、図のようにフランス革命とナポレオン戦争によって占領された地域で都市化(人口の都市集中)が進み、成長率が上がったことを示している。補完的な制度は「ビッグバン」によって一挙に変えないとだめなのだ、と彼らは主張する。フランス革命はすべてを破壊したため、アンシャンレジームに戻すことが不可能になったのだ。
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Acemogluたちは「経済発展にとっても最も重要なのは民主主義や財産権の保護などの制度である」と主張しているが、これに対して台湾や韓国の例をあげて、逆に「経済が発展すれば民主主義になるのだ」として、むしろ経済発展には「開発独裁」のほうが効率がいいと主張する人々も多い。この論文は、フランス革命とナポレオン戦争が全欧の旧秩序を破壊したことが近代化の原因だったことを示し、「制度が経済に先立つ」と主張している。たしかに欧州ではそうだったかもしれないが、これがそれ以外の文化圏にも適用できるのかどうかは疑わしい。最大の反例は中国だろう。