次の本が、ようやく来月上旬にダイヤモンド社から出ることになった。タイトルは、当ブログで過去最高のアクセスを集めた記事からとったが、別に絶望をすすめる本ではなく、政権交代後の日本経済と経済政策を考えるものだ。まえがきから一部引用すると、
長期停滞についての処方箋を書くのは経済学者の仕事だが、日本では政策論争に経済学者がほとんど登場しない。経済学者は学術論文を書くのが本分で、ジャーナリスティックな仕事は「エコノミスト」にまかせておけばよいと思っているのかもしれないが、経済学はもともと「経世済民」のための実用的な学問であり、純粋理論に意味はない。ジョン・メイナード・ケインズは経済学者を歯科医のようものだと考えていた。
 
ただ経済学者は歯科医と違って、自分の力で経済問題を直すことはできない。それはむしろ自動車の運転技術のようなもので、多くの人々がそれを理解しないと意味がないのだ。ドライバーが自動車の製造技術を知っている必要がないように、誰もが経済学の論文を書く必要はないが、それがどう動くかを理解する必要はある。特に政策担当者は、法律職や行政職でも、学部の教科書ぐらいの知識をもっていないと困る。

この意味で経済学のロジックをわかりやすく伝え、合理的な政策を提案することは、その研究と同じぐらい重要だ。ケインズは師アルフレッド・マーシャルの追悼文で、経済学者の本業はパンフレットを書くことだとのべた(『人物評伝』)。特に日本が今、直面している問題は、戦後ずっと続いてきた産業構造や雇用慣行の行き詰まりなどの経済システム全体の問題であり、これを金融・財政などのマクロ政策や労使紛争と考えているかぎり、解決の糸口は見出せない。1990 年代から続いている経済の停滞は、まもなく「失われた20 年」になろうとしているが、その終わりは見えない。

目次

はじめに

第1章 格差の正体
 1.何が格差を生み出したのか
 2.新しい身分社会
 3.事後の正義
 コラム:情報の非対称性

第2章 ノンワーキング・リッチ
 1.社内失業する中高年
 2.働きアリの末路
 コラム:補完性

第3章 終身雇用の神話
 1.終身雇用は日本の伝統か
 2.日本型ネットワークの限界
 3.雇用のポートフォリオ
 コラム:効率賃金仮説

第4章 長期停滞への道
 1.長い下り坂が始まる
 2.輸出立国モデルの「突然死」
 3.希望の消えてゆく国で
 コラム:長期的関係

第5章 失われた20年
 1.どこで間違えたのか
 2.90年代をどう見るか
 コラム:自然利子率と自然失業率

第6章 景気対策の限界
 1.財政政策の欠陥
 2.金融政策の功罪
 コラム:リフレ論争

第7章 日本株式会社の終焉
 1.会社は誰のものか
 2.官僚社会主義の構造
 コラム:負の所得税とベーシック・インカム

第8章 「ものづくり立国」の神話
 1.「すり合わせ」ではもう生き残れない
 2.ITゼネコンの末路
 コラム:ホワイトスペース

第9章 イノベーションと成長戦略
 1.株主資本主義が必要だ
 2.リスク回避からリスクテイクへ
 3.イノベーションの意味
 4.創造的破壊の可能性
 コラム:コンテンツ産業の未来

おわりに