けさの朝日新聞に「民主党が周波数オークションを検討している」という記事が出ている。民主党も自民党の批判を受けて、財源として電波に注目し始めたようだ。また直島政調会長は、「日本の潜在成長率は現在1%前後まで低下しているが、できるだけ早く潜在成長率を1.5─2%に戻したい」と述べた。自民党もマニフェストに「2%成長」を掲げているが、直島氏が潜在成長率に言及したことは重要である。

潜在成長率は、統計に出てくる成長率とは違う日本経済の実力だから、景気対策で上げることはできない。学校の試験にたとえれば、景気対策で成長率を上げるのは、卒業試験の点数にゲタをはかせて合格させるようなもので、卒業はできるが実力(潜在成長率)は上がっていないので、大学入試では役に立たない。実力を上げるには、勉強するしかない。経済の実力も、バラマキによる「一夜漬け」では上がらない。規制改革など長期の成長戦略が必要である。

しかし要領よく実力をつける方法はある。私が受験生のときは、国語と英語はできたので、苦手な数学だけを勉強した。全体にまんべんなく予算をばらまくより、ボトルネックに政策資源を集中することが有効だ。日本経済では労働市場が最大のボトルネックだと思われるので、これを柔軟にして労働生産性を高めることが重要だ。ただ、これは労組などの利害もからみ、簡単ではない。

もう一つのボトルネックが電波政策だ。総務省の「電波社会主義」が、マスメディアの電波独占や携帯電話の「ガラパゴス化」の原因になっている。総務省は、いまだに「免許料が転嫁されて通信料金が上がる」という嘘を流しているが、当ブログでも何度も書いたように、そんなことは起こらない。逆に90年代にアメリカで行なわれたオークションによって価格競争が起こり、料金が大幅に下がった。競争促進によって、既存の業者の談合を破る業者が参入するからだ。

問題はむしろ、ICPFシンポジウムでも民主党の鈴木寛議員とも議論したように、免許料を料金に転嫁できないために業者の経営が破綻することだ。破綻するのは業者の自己責任だが、それによって通信サービスができなくなるのは困る。これは免許を転売する第二市場を設ければよい。2007年の経済財政諮問会議の意見書でも、「電波の二次取引」の市場を設けるよう提言している。

周波数オークションについては、2001年に鬼木甫氏と奥野正寛氏を共同代表とする「IT革命を実現させる電波政策を」という提言が行なわれ、200人以上の経済学者・実務家が賛同した。日本以外の主要先進国では15年前から実施され、問題点も解決策も十分わかっている。民主党の「無駄づかいの削減」で17兆円の財源を生み出すという約束を信じる人はいないだろうが、周波数オークションは政府がやると決めればすぐでき、2011年には300MHz(時価4兆円)も空く電波埋蔵金だ。これこそ自民党の集票基盤となってきたテレビ局の独占を打破し、財源を生み出し、競争を促進して潜在成長率を引き上げる、一石三鳥の政策である。