ナッシム・タレブが、FTで「今回の危機をまねいた本質的な原因は過剰債務だ」とのべている。伝統的な(完全情報の)金融市場では、株式と債務は同等だが、現実の世界では債務は次の点で欠陥がある:
  • 破綻処理が困難である:株式の場合はITバブルのときのように、企業が破綻したら株券が紙切れになって終わりだが、債務は債務者の資産価値が落ちても軽減されないので、債務削減や清算の手続きが複雑になる。
  • 市場の変化に適応できない:グローバル化やインターネットによって市場の変動が大きくなり、金融契約が複雑化した世界で、一定の金利を保証する金融契約はリスクが大きい。
  • 経済状況の変化を反映しにくい:企業業績が大きく落ちた場合、株式の場合は個々の銘柄の配当の変化に反映されるが、金利は債務不履行になるまで返済されるので、企業の潜在的リスクがわかりにくい。
このような問題点は以前からわかっていたことだが、最近までの安定した経済状況のもとでこうしたリスクが軽視され、資本リターンの高い信用デリバティブが過剰に積み上がったことが、今回の危機の大きな原因だ。この背景には、私が以前の記事でも書いたように、法人税などの制度的なバイアスもあると考えられる。危機の再来を防ぐためには、こうした制度を改正し、過剰債務を削減して透明性の高い株式(equity)に変換する国際協力が必要だ、とタレブは論じている。