ムーアの法則によって『過剰と破壊の経済学』が重要になるというのが私の昔の本のテーマだが、Chris Andersonの新著は、資源を節約するのではなく浪費するテクノロジーが21世紀の方向を決めると論じている。世の中の資源のほとんどは、実際には浪費されている。たとえばコンピュータの電源の入っている時間の半分以上は使われていないし、自動車のエンジンの入っている時間の47%は停車している。

こうした無駄をなるべく減らそうというのが経済学の思想だが、これって自然界にはほとんどない発想だ。たとえば生物が進化で生き延びるためにとる戦略は、なるべく多くの卵を産んで、そこからもっともすぐれた(複製能力の高い)個体が生き残るようにすることだ。図のように、クロマグロは100万個もの卵を産む。

ウェブの世界も、新古典派経済学よりクロマグロに近づいている。YouTubeには1億本以上のビデオが投稿されているが、その95%以上は数回しか再生されない。それでもSusan Boyleのように、2億回再生されるビデオが1本でもあれば、YouTubeは全世界からアクセスを集めることができる。これが従来とはまったく逆の「浪費する経済学」を生むかもしれないし、生まないかもしれない。まずいろいろやってみよう。考えるのはタダだから。