セブン・イレブンがフランチャイズ(FC)の値引き販売を制限していた問題で、公取委が排除措置命令を出したが、これは単なる弁当の売れ残りの問題ではない。そもそも本部側が主張するように「対等の契約」であるなら、なぜコンビニの商品はすべて「定価」でしか売っていないのか。

FCとの契約には定価販売の義務はないので、どんな商品を安売りしようとFCの自由なはずだ。さらに奇妙なのは、本部は何のために安売りを禁止するのかということだ。FCが本部に支払うロイヤルティは、

 (売り上げ-仕入れ原価)×0.4~0.5

だといわれるが、売れ残っても返品できないので、本部に払う仕入れ原価は変わらない(正確にいうと「廃棄損」の算入によって若干ちがう)。ロイヤルティは売り上げから原価を引いた粗利の一定率で計算するので、売れ残りを捨てても安売りしてもロイヤルティは変わらない。

では、なぜ安売りを制限するのか。その理由は、本部の公式見解に正直に書かれている(強調は引用者):
(3)安易な見切り販売をした場合の懸念:
  1. お客様のセブン-イレブンの価格に対する不信感
  2. ブランドイメージの毀損
  3. 価格競争:ディスカウントストアやスーパー等との価格競争・値下げ競争に巻き込まれる可能性

要するに、他店や他のFCとの価格競争が始まることを恐れているのだ。価格競争が行なわれるのは市場経済の原則であり、安売りを制限するのは独禁法で禁じられた「再販売価格維持行為」である。公然と行なわれることは少ないので、ヤミ再販と呼ばれる(もちろんこれも違法行為)。コンビニがもうかっているのは、巧妙にヤミ再販を続けてきたからなのだ。

NECは、1988年にパソコンのヤミ再販について公取委から警告を受けた。これは私の制作した番組をもとに公取委が内偵して摘発したもので、私も事情聴取を受けて証拠を提供した。公取の担当者は「再販は昔は堂々とやっていたが、このごろは手口が巧妙化して摘発しにくい。今回はNHKさんのおかげで助かった」と言っていた。

「定価」という表示は、今は独禁法で禁止されている。「希望小売価格」はあくまでも売る側の希望であり、それを小売店に押しつけることはできないのだが、人々の脳内には、日本で長く続いてきた商慣習がしみこんでいる。

しかし消費者もバカではない。最近、うちの近所のセブン・イレブンの隣に100円ショップができ、セブン・イレブンと同じ商品をすべて数十円安く売っている。当然、客は100円ショップに集まり、セブン・イレブンはガラガラだ。日本でも、もう一度、流通革命が必要だ。こんど破壊されるのは、かつての革命の主役だったチェーン店である。