実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択Nudgeの邦訳。行動経済学の本は山ほど出て食傷気味だが、本書はこれを政策に応用しているところがおもしろい。人々が合理的に行動すると仮定して制度設計すると、2000年の欧州の周波数オークションのように大失敗することがあるので、人が限定合理的に行動すると仮定して制度設計しようというものだ。

これは特に霞ヶ関の人々に政策を実行させるときは重要で、彼らには「自分たちは民間より頭がいい」と思い込むバイアスがあるので、「民間を指導して産業を振興する」政策が好まれる。また効率性には関心がなく、公平性に強いこだわりをもつ。これは実験経済学でも世界的に広く観察される結果で、政治家にはこのバイアスがもっとも強い。だから雇用問題にしても不況対策にしても、「人的資本の配分効率化」や「潜在成長率の向上」などといってもだめで、同じことでも「不公平の是正」や「老後の安心」といったわかりやすい言葉で説得しないと、経済学者の合理的な提案は一人相撲に終わるだろう。