「不況になると起業も減る」という話があるが、Economist誌は「不況のときこそ起業のチャンスだ」と説いている。

たしかに外部からの資金調達はむずかしくなるが、アメリカのベンチャーの80~90%は自己資金と友人からの借り入れで起業している。平均的な起業資金は7万8000ドルなので、好不況の影響はそれほど大きくない。それに不況ときは、見込みのない企業をやめて会社を起こす人が増え、彼らの退職金がその資金になる。昨年は不況にもかかわらず、全米で53万の企業が生まれた。不況のときできた会社は、慎重にビジネスプランを立てるため、好況のときに比べて生き残る確率が高い。マイクロソフトもアップルも、不況のさなかに起業した会社である。

アメリカは労働者をもっともクビにしやすい国だが、もっとも雇いやすい国でもある。2007年にアメリカの失業率は4.6%で、欧州平均の7.9%よりはるかに低く、アメリカ人の平均的な失業期間は4ヶ月未満で、欧州の15ヶ月よりはるかに短い。不況のときこそ役所がよけいな世話を焼かないで、資本主義のダイナミズムを生かすことが回復の最短コースである。