池田信夫 blog
< 「中国化」する日本?
「安心・安全」はタダではない >
2009年05月22日
17:33
カテゴリ
Books
アニマルスピリット
Akerlof-Shiller
の訳本が早くも来週、出るようだ。ケインズの「アニマル・スピリッツ」という言葉をいささか広義に使いすぎているきらいもあるが、経済危機を克服するには「信頼」の形成が重要で、それが乗数効果(外部性)をもつという議論は、現状を考える上で役に立つ。記述も専門的でなく、おもしろく書けているので、ビジネスマンにもおすすめできる。
今の日本に必要なのも、投資家や起業家のアニマル・スピリッツだろう。それを高める上で重要なのは財政・金融などの物量的な政策ではなく、本書もいうように人々を説得する「物語」である。パレート効率的なfocal pointが存在する場合には、政府が一貫した物語を語ることによってアニマル・スピリッツを改善できる、という著者の主張は、政府の役割を過大評価するものだという批判もあるが、日本の悲惨な状況をみていると、信頼されない政府が有害であることは間違いない。
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コメント一覧 (5)
1. kk8n53m
2009年05月22日 21:56
今の政府は消費者とのrapportをかなり猛烈な勢いで消費し尽くしていると思います・・・メディアの流動性が少ないのは逆にリスクかもしれませんね。
2. 怯えた獣
2009年05月22日 22:00
負の所得税
今日本という国は崩壊しかけています。池田さんをはじめ色々な方々が指摘されているこの社会の問題は根が深すぎて、どこから手をつけたら良いか、正直誰もが八方ふさがりで、池田さんのように現実を正面から捉えようと試みられ、率直に主張されたからこそ、このような発言の場が形成され、アゴラのような専門家による議論の環境も徐々に生じつつあるのですが、それが、現実をどこまで変えていけるか。なんらかの形で、この社会を再組織化出来なければ、未来は無いと思えます。それには、既存の組織の解体は避けられない、しかし、その抵抗が強固であるならば、その要因となる不安をひとまず緩和し、社会が再スタートを切る手っ取り早い政策として、負の所得税の導入を現実的に議論できないものでしょうか。労働市場の改革に本格的に取組む土壌として、一時的な所得保証的な政策なら抵抗も少ないのではないか。何か根本的な事を国がやらないと、ますますこの危機に歯止めがかからなくなると思います。
3. folk
2009年05月23日 10:22
アイデンティティ
私は最近まで自分のアイデンティティについてあまり深く考えたことがありませんでした。日本という国に生まれはしたものの、数年間海外で暮らし、英語圏の文化にも親しんできました。あまり、日本人であるということを考えた事もなかったのですが、最近その日本人であるという事が単に過去に向かってそうであるというだけでなく、これからどんなに国際化しようとも将来的にも受け継がれていくものなのだと思うようになりました。(勿論、子孫が絶えたり、国境を越えた交流で完全にミックスされたら概念そのものが曖昧になっていくでしょうけど。)
このブログでも、やはり日本という国を前提に議論されている場合が多いのですが、国というものはそれほど強固なものなのでしょうか。情報化が進み、経済がグローバルになる中、ますます憲法や法律の地位、権威が低下していくのを実感する。そもそも、そういったモラルが社会になんらかの形で浸透し、共有されていた前提が日々更新され薄まっている。事実、現実には共有されていない。政府が機能しなくなっているのは、そういう根底の権威が失われつつある事もある気がします。有効な政策という響きも個人レベルではすでに寒いものに感じてしまうのですが。
とはいえ、時々このブログでも発言される、海外に行けば良い的な発想もなんだか安易な気がします。根っこは既に、そして永遠にあるのです。恐らくそれからはそう生まれた限り逃れる事は出来ない。例え海外で生活をし始めても、それは消えずに残るのです。(勿論生活ができないという意味ではありません。)
日本人であるという事の実体は、日々更新され薄まっていくのは必然でしょう。しかし、実体としてある伝統をどのような形に持って行くかは、社会を形成している中で議論されるべき事だと私は思います。
今回の不況で、まだ寝ぼけていた多くの国民も経済のグローバル化の影響力に目覚めた事でしょう。不安や不信はこれからますます広がり、既存のコミュニティや慣習をどこまで崩壊させるのか。そして、分解された個人はどのように再組織化されていくのか。共有できる現実はどのようなものなのか。
このブログに読者として参加している中で思うのはそうゆう事です。
やはり、現実は主体的に作り上げて行かなくてはならないのでしょう。そして、かろうじて心をつなぎ止めているのは過去のつながりです。それは地域で暮らしてきた中で形成されてきたものでしたが、今の人にそれがどれだけリアルなものなのか。
政府が物語を語っても、どこまで届いていくのか。ちょっと深刻な気分です。(一方で、深刻に感じなくなりそうなゆれる不安定感が本当の所かもしれません。それが寧ろ正常な感覚なのだという・・)
4.
bobby
2009年05月23日 23:41
前向きに馬鹿になれる人々
黒部の太陽というドラマを見ると、昭和30年頃の日本人は、リスクを負って大きな勝負に賭ける勇気がまだ残っていたようです。フリーダムという近未来アニメを見ると、信じて馬鹿になれる人間が、社会を変えるだけのエネルギーを生み出すのだという事を教えられます。いまの日本には、そのどちらのタイプの人間もまったく不足しているようです。
5. pk-uzawanian
2009年06月09日 17:36
P18から書かれている「安心乗数」と、小野善康の不況理論は同じですね。
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