共産党も警告するように、「100年に1度の経済危機」という思考停止をまねきやすい言葉に便乗して、「何でもあり」の異常な財政・金融政策が続けられている。先日、ある自民党の族議員が「今までずっと当初予算で要求して認められなかった庁舎の改築費が、今度の補正では3年分前倒しで認められた。財務省から『何かありませんか』と御用聞きに来た」と驚いていた。竹中平蔵氏も、次のように指摘している:
本予算にではなく補正予算として計上されたことについては、さらに深刻な問題が伴う。例えば農水省の場合、今回の補正予算で約1兆円の金額が付けられているが、そもそも農水省の年間予算(非公共事業)は1・5兆円程度である。この1・5兆円の予算を獲得するために1年かけて政策論議をし、予算査定が行われるのだ。しかし今回の場合のように、補正予算ではわずか2週間で枠組みが決められる。
私も補正の要求作成を手伝ったことがある。課長補佐が「来週までにITがらみで500億円の使い道を考えてください」といってきたので、思いつきである無線技術の「電波特区」の話をすると、その日のうちに「200億要求するのでペーパーを書いてください」という電話が来た。その新技術の専門家を呼んで打ち合わせをし、徹夜で提案を書く――という突貫工事だった。幸か不幸か、この予算は通らなかったが、一度も見たことのない無線技術に200億円出す理由を審議官に説明したときは、われながら恐いと思った。

ある官僚によれば「補正予算というのは、昔は非常災害などのとき、文字どおり当初予算を補正するもので、何十兆円も組むものではなかった。それが小渕政権のとき、『金融恐慌を防ぐ』という大義名分でタガがはずれ、その後はひたすら予算規模を競うようになってしまった。今回は財務省もフリーパス状態。そうしないと15兆円は埋まらない」。

しかし小渕政権の歴史的なバラマキ財政で、景気は回復しなかった。財政赤字だけがOECD諸国で最大にふくらみ、それに危機感を抱いた国民の支持を受けて小泉政権が誕生した。日本経済が不況から脱却したのは、小泉内閣の緊縮財政が始まったあとの2003年以降だったのだ。赤字財政で成長率が回復するというのは、理論的にも実証的にも裏づけられない迷信である。Akerlof-Shillerも指摘するように、大事なのは経済が立ち直るという信頼であり、この点からみると日本経済が回復する展望はない。