日本ではあまり知られていないが、アメリカでは1960年代後半から1982年までの時期をGreat Inflationと呼ぶことがある。スタグフレーションによって物価上昇率が14%にも達した時期だ。この時期は「石油危機」として知られているが、実際にはインフレの最大の原因は原油価格の上昇ではなく、FRBがケインズ理論を過信し、財政赤字をファイナンスする過剰な通貨供給を続けたことだった。

同じことが起こるリスクがある、とAllan Meltzerが警告している。FRBのバランスシートは1年で2倍になり、さらに3倍になろうとしている。M2は年率で14%増えた。「デフレのときインフレを心配する必要はない」とか「インフレが起こったら通貨供給を止めればいい」などと甘く見る向きが多いが、CPIに出るような物価上昇ではなく、局地的なバブルとして起こるのが最近のインフレの特徴で、資源価格が上昇し始めている。現在の通貨供給は銀行救済などの政府支出をファイナンスするものなので、インフレになっても簡単には縮小できない。FRBは独立性を失い、政府の一部になってしまった。

中央銀行がマイルドなインフレを人為的に起こした前例はないが、ハイパーインフレを起こすことはできる。インフレは貨幣的現象だが、ハイパーインフレは財政的現象なのだ。