アゴラで、北村隆司氏が鳩山邦夫総務相の一連の行動を批判している。ダイヤモンド・オンラインでも辻広雅文氏が、行政手続きを無視した介入を批判している。私もまったく同感だ。

当ブログでも鳩山氏の暴走を批判したが、その後出てきた「疑惑」なるものの中には、彼の主張を裏づける証拠は何もない。もし鳩山氏の主張するように不正行為があったのなら、彼は警察に告訴すべきだ。東京中央郵便局の建て替えに至っては、言語道断である。重要文化財の指定を申請するのは任意であって義務ではない。それも含めて総合的な都市計画が立てられたのに、土壇場になって大臣が介入するのは、北村氏もいうように途上国なみの独裁政治だ。

今回の事件の特異な点は、通常の行政のスキャンダルのように内部告発で具体的な事実が出てきて、それを捜査当局やメディアが追及するという順序ではなく、当の主務大臣が「オリックスの出来レースじゃないか」という憶測を表明した後から、それを裏づけるかのような話がたくさん出てきたことだ。これは日本郵政や総務省の中に協力者がいなければできない。そして標的は、明らかに西川社長の追い落としだ。後任には、総務省出身の團副社長の昇格が確実視されている。つまり一連の騒動は、天下り先を広げたい総務官僚の仕組んだ「郵政改革つぶし」とみるのが素直な解釈だろう。

きのうの記者会見でも、鳩山氏は「バルク売りが怪しい」などといっていたが、不良資産をバルクで売るのは常識だ。バルクだから不良物件も抱き合わせで109億円の価格がついたので、1件ずつ売却したらほとんどの物件は売れ残るだろう。その1件を取り上げて「1万円で落札した物件が6000万円で転売された」などと騒ぐのも、不良債権処理の実務を知らない社会部記者だ。バルクセールは文字どおりバルクであって、個々の物件に価格はついていない。目印として1万円とつけることもあるし、1円とつけることもある。それが何倍になったなどという話には意味がないのだ。

ここまで騒ぐのだから、鳩山氏には責任をもって「かんぽの宿」の個別売却を最後までやってほしいものだ。合計109億円以下の価格しかつかなかったら、彼のありあまる私財から補填するのが当然だろう。そのお先棒をかついでいるメディアにも責任をとってほしい。