日本経済が外需の変化の影響を受けやすい、と書くと「日本の輸出のGDP比は小さいから影響はない」といったコメントが来る。そういう間違いを堂々と書いた「1ドル70円台の日本経済」という記事が月刊誌に現れたので、基本的なことだが訂正しておく。
「日本の輸出依存度って、せいぜい15%だけど、これって高いかな?」
「……高いだろう。15%もあるのだから」
「でも他の国と比較すると、日本の輸出依存度は、主要国のなかではアメリカの次に低いよ。なにしろ製造業が衰退しちゃった、あのイギリスよりも低いんだから」
輸出のGDP比が小さいからといって、その影響も小さいとは限らない。輸出の波及効果の大きさを示す外国貿易乗数Xは、限界消費性向をc、限界輸入性向をdとすると、

X=1/(1-c+d)

ここで貿易依存度が小さいとdが小さくなるので、Xは大きくなる。逆にいうと、輸出が減った場合のマイナスの影響も大きい。輸出産業の部品を国内で調達する比率が高いからだ。一般に大国では貿易の比重は小さくなるので、輸出比率の小さい日本が外需の影響を受けやすいのである。

この記事は他にも間違いが多く、正しい部分はほとんどない。