ソニー、全日空、東芝、パイオニアなどで、賃下げの動きが広がってきた。「ワークシェアリング」などという曖昧な話ではなく、賃下げこそ雇用維持の切り札である。年収1500万円の中高年正社員の賃金を2割下げれば、非正規労働者の雇用が1人守れる。

名目賃金の下方硬直性が失業をまねくことは、1930年代以来、定型化された事実であり、このタブーを打破することによって失業率の上昇を阻止できる。賃下げによって「乗数効果」で有効需要が減るというのは神話である。賃下げで雇用が増える効果は雇用者数=賃金原資÷賃金という四則演算で明らかだが、乗数効果は理論的にも実証的にも成り立たない。むしろ賃下げによって労働需要が喚起され、中国などとの国際競争にも耐えられるようになる。派遣労働の規制を強めて雇用コストが上がると、海外へのアウトソーシングによって空洞化が進む。そして国内で雇用されない若者が大連に行って、年収75万円になる。これがグローバル資本主義の現実だ。

今年は2009年問題などもあいまって、年度末に完全失業率が10%に近づくことが懸念されている。非正規労働者だけに雇用調整をしわ寄せするのはもう限界であり、不公正である。連合の賃上げ要求は、非正規労働者を犠牲にして正社員の既得権を強化しようというエゴイズムだ。今年の春闘は、経営者の側から賃下げを提案する「逆春闘」にしてはどうだろうか。