私の記事に対する上杉隆氏の反論がダイヤモンド・オンラインに出ている。当ブログは、実名の批判には基本的に答える方針なので、お答えしておこう。彼はこう書く:
給付金は、税の還付であるかどうかは議論の分かれるところだが、少なくともその財源について〈国債の増額〉〈必ず増税〉ということはない。今回の第二次補正予算でも明らかなように、その大部分には「埋蔵金」が当てられる。
定額給付金が減税であるか還付であるかはどうでもよい。問題は、それが国の資産を2兆円減らすということだ。国の財政を複式簿記であらわすと、資産には税収と国有財産があり、負債には国債がある。政府債務843兆円に見合う資産が843兆円あるとすると、税金(資産)を2兆円取り崩すと、何らかの方法で資産を2兆円増やさないと債務不履行が生じる(国有財産の売却は、もともと資産に計上されている項目を現金化するだけなので、バランスは変わらない)。現実には、現在の税率では税収は国債残高に見合わないので増税は不可避だから、2兆円は将来の増税に上乗せされる

「財源は埋蔵金を使うから国債は増えない」などという政府の説明を上杉氏が信じているのも驚きだ。埋蔵金は特別会計の剰余金だから、要するに税金である。つまり減税するぶん他の税金(国債の償還財源)を取り崩すだけなので、負債(国債)が減らないかぎり、今年の減税2兆円は将来の増税で必ず相殺される。それが2年後の消費税かどうかなんてナンセンスな問題だ。一般会計の税収は、特定の使途に特定の財源が結びついているわけではない。重要なのは政府のバランスシートの純債務であり、どの税収を何に使うかではない(そんなことは予算にも書いてない)。

定額給付金を埋蔵金でファイナンスするのは、資産の項目を変えて一つのポケットから別のポケットに税金を移すだけだ。卑近な例でいうと、上杉氏の収入が原稿料だけだとしよう。あるとき貯金が底をついて、タンスの中にあったへそくりを出して昼飯代に使ったとすると、上杉氏は得をしただろうか?タンスの中にあろうと銀行にあろうと、上杉氏の本源的な収入は原稿料しかないので、彼は得も損もしていない。政府支出は国民の税金を国民に還元するだけなので、長期的な経済効果はプラスマイナスゼロである。

これはリカードの中立命題として、200年前から周知の事実だ。バラマキ政策が一時的に効果をもつように見えるのは、国民の錯覚を利用しているだけで、それも何度も繰り返すと、国民も学習してだまされなくなる。定額給付金を信用しない日本人は、中立命題を学んだのである。それを理解していないのは、簿記も知らないジャーナリストだけだ。

追記:自民党は、関連法案の成立をまたず、政府短期証券を発行して定額給付金を支給する方針を打ち出した。これで上杉氏の「財源について〈国債の増額〉ということはない」という根拠も崩れたわけだ。要するに埋蔵金も国債も同じで、最後は税金なんだよ。