民主党が派遣労働の規制を強化する法案を、社民党などと共同提案するそうだ。菅直人代表代行は、きのうの記者会見で「これまで製造業への派遣禁止まで踏み込んでいなかったが踏み込む」とのべた。今の国会情勢ではただのスタンドプレーだが、政権を取って同じような法案を出したら通ってしまう。

46万人といわれる製造業の派遣労働を禁止したら、何が起こるだろうか。菅氏は派遣がすべて正社員として採用されると思っているのかもしれないが、企業の賃金原資は限られているので、そういうことは起こらない。ある企業に300人の労働者がいるとしよう。200人が正社員で100人が派遣、正社員の年収は400万円、派遣は200万円だとすると、賃金原資は

200人×400万円+100人×200万円=10億円

ここで派遣が禁止されて、正社員しか雇えなくなったら、何が起こるだろうか。賃金原資が変わらないとすると、雇用されるのは

10億円÷400万円=250人

つまり派遣の半分(50人)は失業するわけだ。人手が足りなければ、正社員を増やさないで残業を増やす。これが現実に起こったことだ。次の図はきのうも紹介したOECD報告のものだが、90年代以降、日本の平均賃金(原資)はほとんど変わらないで残業が大きく減り、景気回復にともなって増えている。
つまり派遣を禁止すると派遣労働者の半分は職を失う。これは正社員の賃金が派遣の2倍という事実から算術的に導かれる結果で、派遣の比率が何%であっても変わらない。46万人の派遣労働者のうち、23万人が路頭に迷うだろう。菅氏は東工大出身だから、まさかこんな小学生の算数がわからないことはあるまい。