「史上最大」と話題を呼んだ、Acemogluの成長理論の教科書(Amazon.comではすでに発売)。A4に近い大判で990ページ。裏表紙でソローが「ボーイング747を見たライト兄弟のような気分だ」と評している。通読することは今後ともないので、ざっと眺めた感想を:
著者も序文で書いているように、これは成長理論というより「長期マクロ経済学」の教科書といったほうがいい。もともとケインズ理論とは別に始まったソローの成長理論が精密化され、他方でマクロ経済学もルーカスなどによって動的最適化の理論になったので、両者にはほとんど区別がなくなった。マクロ理論にはもう「学派」はなくなったといってもいい。いまだに短期の「景気対策」ばかり論じている日本のどマクロ経済学者には、本書ぐらい読んでから議論してほしいものだ。
もう一つ印象的なのは、技術革新や制度の問題に多くのページがさかれている点だ。したがって本書は、「イノベーションの経済学」の最上級教科書でもある。一昔前はイノベーションといえば内生的成長理論だけだったが、本書では「シュンペーター理論」や開発経済学も取り上げている。さらに本書の最新の成果は、著者の専門である政治経済学で、これまで定性的な議論にとどまっていた制度分析を成長理論と結びつけている。
ただし、ビジネスマンにはおすすめできない。大学院生でも、本書を読める学生は限られているだろう。一貫してダイナミック・プログラミングで書いているので統一性は高いが、数学的にはきわめて高度だ。
追記:偶然きょうAghion-Howittの成長理論の教科書も、Amazon.comから届いた。こっちは「シュンペーター理論」を中心にして創造的破壊を論じている。数学的には、こっちのほうが一般向け。
著者も序文で書いているように、これは成長理論というより「長期マクロ経済学」の教科書といったほうがいい。もともとケインズ理論とは別に始まったソローの成長理論が精密化され、他方でマクロ経済学もルーカスなどによって動的最適化の理論になったので、両者にはほとんど区別がなくなった。マクロ理論にはもう「学派」はなくなったといってもいい。いまだに短期の「景気対策」ばかり論じている日本のどマクロ経済学者には、本書ぐらい読んでから議論してほしいものだ。
もう一つ印象的なのは、技術革新や制度の問題に多くのページがさかれている点だ。したがって本書は、「イノベーションの経済学」の最上級教科書でもある。一昔前はイノベーションといえば内生的成長理論だけだったが、本書では「シュンペーター理論」や開発経済学も取り上げている。さらに本書の最新の成果は、著者の専門である政治経済学で、これまで定性的な議論にとどまっていた制度分析を成長理論と結びつけている。
ただし、ビジネスマンにはおすすめできない。大学院生でも、本書を読める学生は限られているだろう。一貫してダイナミック・プログラミングで書いているので統一性は高いが、数学的にはきわめて高度だ。
追記:偶然きょうAghion-Howittの成長理論の教科書も、Amazon.comから届いた。こっちは「シュンペーター理論」を中心にして創造的破壊を論じている。数学的には、こっちのほうが一般向け。
日本の公務員試験では、ハロッド・ドーマーとソロー・スワンが頻出であるようです。
誰が問題を作っているのか知りませんが、資格試験のおかげで教科書に古くさい内容がいつまでも残るのは残念なことです。
マンキューマクロの剽窃と噂される中谷マクロにはAK理論など、いくつか紹介だけはされていますが、詳しい内容はないようです。
アセモグルの成長理論は、Introductionと書かれていますが、これは学部向けなのでしょうか。「史上最大」と話題を読んだ割りに、日本に住む我々は情報弱者になってしまっているので、どういう本なのかよくわかりません。
目次を見る限りでは、様々なモデルを網羅的に敷衍しているようですね。1000ページもあると、さすがに研究用という気がします。