Dankogai経由で内田樹氏のおもしろい記事を読んだ。結論からいうと、「2009年はたぶん日本は『内向きシフト』舵を切るようになると私は推察している」(原文のまま)という彼の意見に、私も賛成だ。ただ私はこの記事を皮肉だと思ったのだが、どうやら内田氏は本気で内向きがいいことだと信じているらしい。彼はこう書く:
「外向き」になるにはアメリカにはアメリカの、フィンランドにはフィンランドのそれぞれの「お国の事情」というものがある。その切ない事情についてはご配慮して差し上げるべきであろう。だが、わが日本にはせっかく世界でも希なる「内向きでも飯が食えるだけの国内市場」があるのである。そこでちまちまと「小商い」をしていても飯が食えるなら、それでいいじゃないか。
フィンランドが外向きだというのは正しいが、アメリカは主要国でもっとも内向きの国である。彼らのパスポート保有率は14%で、内向きの日本人(26%)の半分しかない。それより問題は、「内向きでも飯が食える」のかということだ。内田氏の勤務している女子大の学生の授業料を払っているのは彼らの親だが、その所得は日本経済が衰退すれば減ってゆく。

そして「内向きでも飯が食えるだけの国内市場」は、どんどん中国や韓国などに侵食されている。たとえばPCの世界市場では、HP、デルに中国のレノボと台湾のエイサーが続き、国内トップの東芝でもわずか4.3%だ。おかげで東芝もソニーも、人員整理を始めている。「ちまちまと小商い」をしても、規模の経済で太刀打ちできないのだ。


PCの世界市場シェア(2007年第3四半期) 青=HP、緑=デル、黄=レノボ、紫=エイサー、ピンク=東芝

トヨタを筆頭とする輸出産業が総崩れになった日本経済は、結果的には「内向きシフト」をとるだろう。そのためにマイナス成長が続いたら、まっ先にあおりを食うのが私立大学で、すでに半数が定員割れだ。内田氏の勤務する大学がどうかは知らないが、一般論としていえば女子大の経営状況は最悪なので、彼が飯を食えなくなるリスクは、彼が思っているほど小さくない。