中谷巌氏には学生時代からお世話になったので、こういう記事を書くのは心苦しいが、率直にいって8年前の本あたりからおかしくなったといわざるをえない。本書は、経済学者が書いたとは信じられない本だ(画像にはリンクを張ってない)。たとえば、著者はこう書く:
シニョレッジ(通貨発行益)が発生するのは、基軸通貨だけである。たとえば日本の円は国際間の取引に使われることはまずない。だから日本が1万円札をいくら刷ったところで、それでシニョレッジを稼ぐことはできないのだ。(p.358、強調は引用者)このためアメリカは「ドルを過剰に印刷してシニョレッジを稼ぐ誘惑」に勝てず、それがインフレを起してドルの暴落をまねく・・・と続くのだが、「円が国際間の取引に使われない」のなら、外為市場は何のためにあるのか。ドルを印刷するだけでインフレになるのなら、アメリカのデフレはとっくに終わっているだろう。シニョレッジについては、たとえば高橋洋一氏はこう書く:
貨幣部門の超過供給は、広義の政府部門(政府と日銀)の通貨発行益(シニョレッジ)を生み、それが非貨幣部門の超過需要となっています。(p.111)これが普通の理解だ。シニョレッジは別に基軸通貨に固有のものではなく、すべての通貨に発生する。したがって、この誤解をもとに展開される「ドル覇権の終焉」についてのありがちな話も、すべてナンセンスである。ドルの価値と「覇権」には何の関係もない。むしろドルが下がれば、アメリカ企業の国際競争力が強まって成長率は上がるのだ。その他にも、こうした初歩的な間違いがたくさんあり、全体の内容も
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