あまり知られていないが、ネット通販の利用者にとっては他人事ではない規制が進められている。金融庁が、荷物を受け取って代金を払う「代引き」を規制しようとしているのだ。その理由が驚きだ。代引きが為替取引だからというのである。

犯罪収益移転防止法では、マネーロンダリングを防ぐために為替取引の際に本人確認を義務づけている。今度、これまで銀行に限定されていた為替取引を一般の電子商取引業者に開放するにあたって、金融庁は宅配業者も「金融業者」とみなして、10万円超の荷物は本人確認や委任状がなければ、家族でも代引きで受け取れないことにしようというのだ。当然ネット通販業者やコンビニは大反対だが、為替って外国との貿易の話じゃなかったの?

違うのだ。そもそも日本の法律には「為替取引」の定義がなく、2001年の最高裁判例では「隔地間で直接現金を輸送せずに資金を移動する」ことと定義されている。なるほど、これだと確かに代引きも「為替取引」にあたる。アルカイダがあなたの名をかたって、アマゾンを使って本国に送金・・・するはずないじゃないか。この最高裁判例には、肝心の「外国」という言葉が抜けているので、すべての「隔地間取引」を規制しようとすると、こういう珍妙なことになるのだ。

薬のネット販売規制といい、この代引き規制といい、「セキュリティ」の名による過剰規制が横行している。いま歯止めをかけないと、官製不況はさらに悪化するだろう。