
本書は、拙速の「リーマン後」本としてはよく書けている。前半は毎日のニュースで読んだ話が多く、あまり新鮮味はないが、後半は著者お得意の歴史哲学だ。「アメリカ金融帝国」が1968年に始まったというウォーラーステインの受け売りはいただけないが、70年代以降が「ハイエク・フリードマンの時代」だったのは事実だろう。ところが日本はそれ以前のケインズ的福祉国家で、それなりにうまく行っていた。それは「日本輸出株式会社」のエンジンだったトヨタやソニーなどが、競争力の弱い国内産業を支えてきたからだ。
しかしアメリカ金融帝国のエンジンだった投資銀行が崩壊したのと同時に、日本経済を支えてきた輸出産業も崩壊してしまった。だから日米の直面している問題は性格が違う。アメリカのやるべきことは金融システムの再建に尽きるが、日本は情報革命やグローバル化に立ち遅れた産業構造を建て直すという、もっと厄介な問題に直面しているのである。著者もいうように、世界的に新自由主義の見直しが始まるだろうが、ケインズへの回帰は答にならない。アジアとの連携によってグローバル化を進めるしか、日本経済の生き残る道はない。
資本と労働の自由化を通して、ゾンビ企業やゾンビ法人を淘汰し、新たな市場と価値と雇用を創造する方策が不可欠です。開業医をドラックストアに解放するだけで医者不足も解消し市場は劇的に活性化します。英語と中国語を日本語なみに小中学校で義務教育化すれば20年後には世界中が労働市場になります。羽田空港を24時間営業するだけでどれだけ便利になるでしょう。改正貸金法を元に戻すだけでも効果があるでしょう。
とにかくマルクスとケインズをダシに使って現状維持を続けるゾンビたち(大半が団塊世代)が多すぎです。このまま税金に依存する人間が増え続ければ日本の経済や財政が破綻するのは誰の目にも明らかです。