「大麻汚染」をめぐる過剰報道が続いているが、さすがに一部のメディアは日本の刑罰が異常だということに気づいて、トーンが変わってきた。けさの朝日新聞には、リードで「時代にそぐわなくなった法律を改正する時期に来ている」という「捜査関係者」の話を紹介する一方で、「タバコ・酒より有害」という「厚労省」の話を囲みで紹介する分裂した記事が出ている。産経も社説では「安易な姿勢厳しく戒めよ」と書いているが、「正論」には竹内久美子氏の「大麻はタバコと同様に有害」という記事を載せ、多くの先進国が事実上合法化したことを紹介している:
こうした続々の解禁。それは1995年にイギリスの医学雑誌『ランセット』に発表された、30年にわたる調査で、大麻を長期使用しても健康に問題はないとの見解が示されたことが一番大きいだろう。『ランセット』は、『ネイチャー』に匹敵するくらい格式の高い医学雑誌である。
これが世界の常識だ。知らないのは日本のメディアだけである。大麻が「タバコと同様に有害」なら、論理的にはタバコと同様に合法化して規制するか、タバコを非合法化するかのどちらかだろう。ところが彼女の結論はこうなる:
タバコがもし、日本人にとって未体験の品だったとして、しかも健康への影響がこんなにもはっきりわかっているとする。政府は解禁するだろうか。おそらくしない。となれば大麻も解禁すべきではないだろう。
この原稿は論理が破綻しているが、産経の編集部が手を入れた可能性もある。厚労省の記者クラブで「大麻撲滅に協力する」といった非公式の協定が行なわれ、各社とも現行法に疑問を呈するような記事は出さないことに決まったのではないか。しかし朝日や産経の分裂した記事は、厚労省と世界の常識の食い違いが顕在化してきたことを示している。お笑いなのは、毎日の社説だ:
[大麻は]より悪性が強い薬物の乱用を防ぎ、注射針の使い回しによるエイズ感染を防止するための次善の策として黙認されている。覚せい剤、コカインなどへ薬物依存が進む人も少なくなく、密売で暴力団などが資金を調達している現実もある。規制緩和などは、およそ現実的ではない。
問題は大麻そのものではなく、こうした非合法の流通ルートが暴力団の資金源になり、犯罪の温床になることだ。禁酒法がマフィアを育てたのと同じである。合法化して販売を規制し、高率の税金をかければ、酒やタバコで暴力団が出てこないのと同じように、こうした弊害は防げる。大麻の害はタバコとほぼ同じ(かそれ以下)なのだから、取り扱いもタバコと同等にするのが当然である。大麻取締法の改正が政治的に困難なら、罰金ぐらいの軽い処分にとどめるべきだ。種子の所持ぐらいで逮捕するのはバランスを欠いている。