先週の金曜の記事は、細かい話だったのでやや専門的に書いたのだが、5万以上のアクセスがあり、「はてなブックマーク」で200以上のブックマークを集めて首位になったのには驚いた。この問題は非常に重要なので、わかりやすく(上瀬千春氏にもわかるように)説明しておく。

Werbachのスライドの16ページにもあるように、電波は「稀少」ではない。アメリカでは、30MHz~3GHzの帯域の95%が、割り当てられながら使われていない。われわれが電波探検隊プロジェクトで調査したときも、電波が日本一混んでいる渋谷でさえ90%が空いていた。このように非効率な電波利用が起こる原因を具体的にみてみよう。

茨城県は、もともと東京タワーの電波を受信していたので、NHKは総合(G)・教育(E)の2チャンネルしかなかったが、デジタル化の際、茨城出身の海老沢元NHK会長の強い要請で、新たにローカルのチャンネルが割り当てられた。他の民放(N=NTV、T=TBS、F=フジ、A=テレ朝、V=テレ東)も含めて、現在の地デジ中継局を表にすると次のようになる(1W以下の小電力局は略):

Ch水戸高萩筑波日立鹿島山方大宮男体北茨城竜神平
13EE
14NN
15TT
16GG
17AA
18VV
19FF
20GGGGG
21FFFF
22TTTT
23VVVV
24AAAA
25N
26EEEE
27
28
29
30
31G
32
33
34NN
35F
36
37
38N
39EE
40E
41TN
42G
43
44A
45
46V
47G
48
49G
50
51
52

表の空白の部分が、放送局に割り当てられながら使われていないホワイトスペースである。携帯電話業者が見たら目まいのするような超低利用率で、全40チャンネル(13~52)×10エリアの1割も使われていない。上瀬氏の「真っ赤に埋まっている」とかいう話は、真っ赤な嘘である。たとえば水戸をみればわかるように、そもそも7チャンネルしかテレビ局がないのだから、今後どんなに中継局を増やしても、40チャンネルを真っ赤に埋められるはずがない。

このように(独立系U局を含めても)全国で40チャンネルのうち、たかだか10チャンネルしか使っていないのだから、テレビの電波は任意の地点で30チャンネル以上(ほぼ200MHz)空いているのである。これは非常に大きな帯域で、今のすべての携帯電話業者がほとんどすっぽり収容でき、オークションにかければ2兆円以上の価値がある。このホワイトスペースをWiMAXなどの無線ブロードバンドに使うことも可能だし、4GHz帯で実験の始まっている4Gも、UHF帯を使ったほうがはるかに効率が高い。

ただ日本は中継局の密度が高いので、ホワイトスペースを携帯端末に使う場合は、たとえば水戸で空いている35チャンネルが高萩ではフジに使われているため、周波数を切り替える必要がある。これはcognitive radioで周波数を検知して切り替えてもよいし、チャンネルプランをデータベース化してGPSで携帯端末の位置と照合して切り替えるgeolocationという技術もある。いずれにせよ、これは上瀬氏のいうように「ホワイトスペースがない」のではなく、空白の帯域が頻繁に切り替わるというテクニカルな問題にすぎない。

さらにSFNを使えば、13~20チャンネルだけで茨城県全域に中継できるので、残りの32チャンネルは完全に「空きスペース」になる。上瀬氏は「SFNは不可能だ」と言っていたが、これも嘘である。総務省もISDB-TでSFNの実験に成功している。彼らが効率の悪いMFNにこだわるのは、すでにタダでもらった240MHzという巨大な電波利権を手放したくないからである。しかしSFNのほうが中継局の構造も簡単で、コストもはるかに安くなる。今後の「条件不利地域」だけでもSFNに変更し、余った周波数は返却すべきだ。

追記:われわれの入手した資料によれば、800MHz帯がFPUに利用されている時間は、全国で月間数十時間である。これは国民の共有財産を私的にガメる犯罪に近い。

追記2:最新情報を提供していただいたので、表を少しアップデートした。1W以下の局を含めると、ホワイトスペースはこの2倍以上ある。