
温暖化にとっても石油の枯渇にとっても、ベストの代替案は原子力だろう。不幸な事故があったため、一時は原子力産業は壊滅したが、実際にはスリーマイル島は炉心溶融ではなかった。最大の炉心溶融であるチェルノブイリ事故は、黒鉛減速炉という古い技術で、格納容器もない裸の状態で操業していた。先進国の原子炉の安全設計は、これよりもはるかに高度なので、原子炉事故で死ぬ確率は隕石に当たって死ぬ確率より低い。
とはいえ人々のリスク態度は確率では決まらないので、炉心溶融が論理的に起こりえない設計にする必要がある。それは可能で、原子炉の出力を小さくし、オペレーターや緊急安全装置が作動しなくても、炉心の温度が上がりすぎると自動的に出力が落ちる受動的安全装置をつければ、冷却材が完全に失われても圧力容器が壊れない。
このようにモジュール化した「小石」のような燃料を数多く組み合わせるpebble bed reactor(PBR)とよばれる原子炉は、コンピュータの部品のように標準化できるので、コストも石油よりはるかに安い、とEconomist誌は報じている。南アフリカでは、2010年までにPBRを建設する予定だ。炉心溶融の心配さえなければ、小型の原子力電池も可能で、東芝はそうした技術を開発している。
放射性廃棄物の問題は残るが、これは技術的というより政治的な問題で、地球上に安全に廃棄できる場所はいくらでもある。その「廃棄権」を取引する市場でもつくれば、ロシアや途上国が喜んで買うだろう。
追記:IAEAなどの推計によれば、ウランの埋蔵量は200年以上ある。究極のエネルギーは核融合だが、これはいつ実用化できるかわからない。
いつもありがとうございます。ネグリ氏のときにお話させていただきました。
質問です。
今回のエントリ、最後の放射性廃棄物に関する二行、「地球上に(未来永劫)安全に廃棄できると」いうのは、正確なことなのでしょうか?
それからこれは別テーマですが、最低賃金を法的に引き上げるということは、経済学ではどのようなデメリットが明示されているのでしょうか?
私はオランダ在住ですが、当地と比較して、日本の非正規雇用一般単純労働の賃金は、やはり低くおさえられているように思います。単純比較はできませんが、基本的な生活を維持するために必要なものの物価に対しての、賃金にそのような印象を持ちます。人件費が高いために、外食や何かのサービスを受けることは、日本よりオランダのほうが、はるかに高額に感じますが、非正規雇用でも質素な生活は送りやすい。
その人件費の高さが、法律によるものなのか、市場によるものなのかは、すみません、勉強不足でわかりません。
やはり、金利などと同じく、人件費の最低も、市場にゆだねるべきなのでしょうか?
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お忙しくあられるでしょうから、非掲載にしてくださっても、日ごろの感謝の気持ちはいささかもかわりません。
それでは、失礼しました。