けさの日経新聞によれば、洞爺湖サミットに向けて政府が今月出す「福田ビジョン」に、政府は温暖化ガスの国内排出権取引制度を明記することを決めたそうだ。かねてから主張しているように、私は(多くの世界の経済学者と同様)この政策には反対である。その理由は、大きくわけて次の4つだ:

第1に、地球温暖化が起こっているのかどうかが疑わしい:今年初め、世界の主要な4つの気候観測機関がそろって、2007年に地表の平均気温が約0.6~0.7度下がったことを発表した。これは年間としては記録史上最大の低下であり、その後も続いている。図のように、ここ20年のトレンドをとってもほぼ横ばいである。1970年代までは寒冷化していたことが知られており、温暖化が単調に進むというトレンドはみられない。


第2に、温暖化が起こっているとしても、その主要な原因がCO2であるというIPCCの結論には疑問がある:国内だけでも、当ブログで取り上げた槌田敦氏伊藤公紀氏・渡辺正氏だけでなく、丸山茂徳氏(東京工大)もIPCCのシミュレーションは誤っており、21世紀中に寒冷化が始まるという計算結果を示している。

第3に、IPCCの結論を認めるとしても、排出権取引は経済的に非効率である:CO2の排出を削減する手段としては、排出権取引には意味がない。総排出量は変わらないからだ。またその削減目標にも科学的根拠がなく、恣意的な削減枠の割り当ては統制経済やrent-seekingをまねき、国際的なenforcementもきわめて困難である。炭素税のような通常の経済政策で行なうべきだ、とMankiwを初めとする世界の主要な経済学者が提言している。

第4に、グローバルな課題の中で地球温暖化の優先順位は低い:Bhagwati, Kydland, Mundell, Schellingなど7人の著名な経済学者の指導した共同研究、コペンハーゲン・コンセンサス2008によれば、グローバルな30の課題のうち、温暖化ガスの削減は最下位(費用対効果が最低)であり、低炭素技術の開発が14位である。

洞爺湖サミットは気候変動会議ではなく、グローバルな課題を広く議論する会議である。したがって必要なのは、まずアジェンダの優先順位を討議することあり、特にコペンハーゲン会議でも最も深刻かつ緊急の課題と指摘された食糧危機の問題を最優先すべきである。優先順位が最低で政策としても有害無益な排出権取引を日本政府が受け入れることは、数兆ドルの税金の浪費と経済的損失と、数億人の餓死する子供たちを生み出すだろう。