グリーンピース・ジャパンが、日本の調査捕鯨で船員が鯨肉を「横領」したとして東京地検に告発したが、逆に彼らの示した証拠なるものが倉庫から盗まれたものだとして、運送会社が青森県警に被害届を出し、県警は捜査を開始した。グリーンピースは盗みの事実を認め、星川淳・事務局長は「ご迷惑がかかったらおわびしたい」とコメントした。星川氏は刑事訴訟法も知らないのだろうが、違法な手段によって収集された物品には証拠能力はないので、彼らの告発は受理されない。

この事件は、エコロジストを自称する連中が常識的なモラルもわきまえていないことを示す点で、象徴的である。そもそも鯨を殺すことが非人道的なら、牛や豚を屠殺するのは人道的なのか。ジャック・デリダは、「鯨やイルカを守れ」という主張をどう考えるか、という質問に対して「そういう哺乳類と他の動物との差異は絶対的なものではありえません」と答えている。彼は「動物たちが人間たちの欲求のために畜群として大量飼育されながらも絶滅される運命にある、そのような邪悪なやり口によって科せられるジェノサイド的責め苦が存在するのです」とのべて、ベンサムの次の言葉を引用する:
The question is not: can they speak? but can they suffer?
鯨が殺されるとき苦しむとすれば、牛も豚も鼠もゴキブリも、殺されるときには苦しむ。さらに「すべての生命を尊ぶ」ことを原則にするなら、菜食主義でさえ無罪ではない。つまり人類はすべて餓死することが、もっとも人道的な生き方だ。人間というのは、そういう根本的な矛盾を抱えた存在なのである。

デリダは、「エコロジスト」のように人間(とそれに近い哺乳類)の受苦だけを特権化する発想は、動物には知性がないからどんな残虐なことをしてもいいと考えて生態系を破壊してきた、デカルト以来の西欧のロゴス中心主義の戯画だと批判している。そこから、ユダヤ人は「正しい人類」ではないから絶滅しなければならないとするジェノサイドへは、ほんの一歩だ。こうした欧米人の傲慢もさることながら、それを盲目的に輸入し、犯罪までおかして宣伝する星川氏のような偽善的エコロジストは、日本人の恥だ。

追記:欧米メディアはグリーンピースの主張ばかり紹介しているので、英文ブログで事実を書いた。