きのうは「小室逮捕」が米大統領選も吹っ飛ばす騒ぎで、私のところまで電話取材が来た。私はJ-POPはラジオで流れている以外は聞かないので、彼の音楽についてコメントする資格はないが、知っている範囲でいうと、彼の曲のどこがいいのかわからない。コメントしたのは「音楽的には無価値なものをマーケティングだけで売れると錯覚したんじゃないか」ということだ。

マーケティングが悪いといっているのではない。資本主義の社会では音楽は商品なのだから、最大限売れるように努力するのは当たり前だ。しかし彼の場合は、メディアへの露出をコントロールしないで、過剰に消費されたのが失敗だったのではないか。音楽家の才能が続く時期は短い。松任谷由実も「荒井由実」の時代で音楽的には終わっていたが、メディアへの露出をセーブして寿命をのばしてきた。

出版界でも最近、「小室シンドローム」が目立つ。本屋へ行くと勝間和代本や茂木健一郎本が山のように積まれ、右から左までどの雑誌を見ても佐藤優氏の連載が出ている。佐藤氏は「原稿を毎日40枚書いている」と豪語したそうだが、ちゃんと調べたらそんなスピードで書けるはずがない。最近の彼のコラムのほとんどは、ウェブの情報と昔の原稿のカットペーストだ。

こういう一極集中は、出版でも音楽でも最近とくに顕著になってきた。それは印刷や録音のコストが低くなり、固定費のほとんどが宣伝になってきたためだろう。宣伝には規模の経済があるので、多くの著者(アーチスト)に宣伝費を分散して数万部売るより、特定の著者に大量に宣伝費を投入して百万部売ったほうが効率がいい。こうなると洗剤や即席ラーメンと同じで中身はどうでもよく、売れる商品がいい商品である。

しかし洗剤の売り上げは宣伝費に比例するが、本や音楽の限界効用は急速に低下するので、あまり同じようなものばかり出していると飽きられ、ある日突然、売れなくなる。小室ファミリーのCDはブックオフでは250円らしいが、こうなると二度と元には戻らない。彼も企画力の貧困な音楽産業の犠牲者なのではないか。

追記:取材や連絡は、右の写真の下のSBI Businessに連絡先が書いてあるので、そちらにお願いします。