株価の暴落を受けて、政府は銀行の保有株式を買い取ったり予防的に資本注入するなどの「緊急市場安定化策」の検討に入った。しかし日本株が売られている原因は輸出産業の収益悪化であって銀行の問題ではないのだから、こんな政策は見当違いだ。

いまだに政府は「失われた10年」の教訓を学んでいないようだ。中川財務相が「資本注入が大事だ」と欧米に説教して失笑を買ったが、日本が1998年に行なった横並びの資本注入は、失敗例として国際的に知られているのだ。当時の金融危機管理審査委員会の佐々波楊子委員長と仙石由人氏の国会での参考人質疑は、次のようなものだった:
仙谷委員:今、ラインシート[金融機関の経営内容を記載した資料]を取り寄せて吟味したとおっしゃっておりますけれども、もし本当にちゃんとラインシートを取り寄せて、こんな幽霊会社みたいなところに一千億も貸されておるのを吟味したら、こんな結果出るはずないじゃないですか。大体、わかっているんですか。この一兆五千億の長銀の関連会社に対する融資が第何分類にあって、どのぐらい引き当てをされていたのか、わかっているんですか。

佐々波参考人:ただいまのラインシートにつきましては、言い直しますと、大蔵省、日銀にお願いしたということです。それから、個別行についての内容については、私自身は承知しておりません。
この発言は、大蔵省の無責任な銀行行政を象徴する言葉として歴史に刻まれた。佐々波委員会が資本注入を決めた7ヶ月後に「健全」だったはずの長銀が破綻、9ヶ月後に日債銀が破綻して、投入された約8000億円の税金はパーになった。今度またこういうナンセンスな銀行救済をやったら、株価はさらに暴落するだろう。

日本株がOECD諸国で最大の下げ幅を記録したのは、これまで低金利=円安によって輸出産業を補助することで支えられてきた「虚妄の景気回復」のメッキがはげたからだ。株価がバブル後の最安値に近づいたのは、それを象徴している。アメリカで起きているのは金融システムの崩壊によるilliquidityだから流動性を供給する必要があるが、日本で問題なのはゾンビ企業のinsolvencyだから、救済してはならない。これを契機に、資本市場を活用してゾンビを整理・再編することが最善の経済対策だ。

追記:コメントで教えてもらったが、新銀行東京もどさくさまぎれに資本注入の対象になるようだ。歴史は繰り返す――1度目は悲劇として、2度目は茶番として。