きょう「デジタル・コンテンツ利用促進協議会」の設立総会が開かれ、中山信弘氏が会長に就任した。そのあいさつが、妙に専門的でおもしろかった。彼は「著作権法は強行法規じゃないのだから、法改正しなくても契約ベースで解決できる」という議論は「理論的には成り立つ」としながら、「ハリウッドのように脚本家の組合が脚本料をめぐって映画会社と団体交渉するようなシステムは日本にはないので、契約ベースで問題を解決するのは百年河清を待つに等しい」という。

たしかに伝統的なメディアについてはそうかもしれないが、デジタルメディアでは、ccライセンスのように電子的に契約のテンプレートをつくることもできる。Googleが「YouTubeライセンス」みたいなものをつくって世界の権利者と電子契約すれば、著作権法はoverrideできるのだ。問題は、現在の著作権法による権利保護が強すぎるため、それより弱い契約を結ぶインセンティブが権利者にないことだ。

しかしパーティで小倉秀夫さんも言っていたが、現在の著作権法が権利者に有利だというのは錯覚だ。あまりにも多くの権利者・隣接権者が許諾権をもっているため、結局anti-commonsになってコンテンツが動かない。イタリアのように許諾をゆるやかにしたほうがコンテンツが流通し、権利者にとってもユーザーにとってもwin-winになるだろう。

中山氏は「リスクをとって起業できる環境を整えることが、次の世代に対するわれわれのプレゼントだ」としめくくった。今週のASCII.jpにも書いたが、投資リスクをゼロにしようという会社はないのに、法的リスクだけはゼロでないと法務部がOKしない。しかし厳密に解釈すれば、著作権法や個人情報保護法に違反していない企業は日本中に一つもない。YouTubeのように、あえて法的リスクをとることもイノベーションの一つの方法である。この意味で、来年の著作権法改正でフェアユースが認められる方向なのは一歩前進だ。次回のICPFセミナーでは、中山氏を招いてこうした問題について議論する。

テーマ:「デジタル・コンテンツ利用促進のための法制度について」
スピーカー:中山信弘氏(デジタル・コンテンツ利用促進協議会会長)
モデレーター:池田信夫(ICPF理事)

日時:10月7日(火)18:30~20:30
場所:アルカディア市ヶ谷(私学会館)
   東京都千代田区九段北4-2-25(地図

参加費:3000円 ※ICPF会員は無料(会場で入会できます)
申し込み:infor_at_icpf.jpまで(_at_を@に変換して)氏名・所属を明記してe-mailをお送り下さい(スパム対策のため、アドレスを変えたのでご注意ください)。定員に達したら締め切ります。