けさの朝日新聞によると、
デジタルテレビの視聴に必要なB―CAS(キャス)カードを独占的に発行する「ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ」(東京都)が設立以来、会社法に違反して財務内容の公告を怠っていた。同社は、放送局から委託を受けて放送局の費用負担でB―CASカードを発行し、電機メーカーに支給している。00年の会社設立からの累計の発行枚数は4402万枚。

公共性が高い業務を担う同社だが、これまで売上高や利益、剰余金などの財務データをまったく公表してこなかった。会社法は、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表などを公告しなければならないと定め、公告を怠ると過料に処すと規定している。朝日新聞の取材に同社は未公表だったことを認め、2日、貸借対照表と損益計算書を自社ホームページに開示した。03年度20億円、04年度33億円、05年度61億円、06年度81億円、07年度99億円を売り上げ、最近は年4億円前後の利益を確保していた。
B-CAS社は、もとは電話番号も公表していなかった。FACTAなどで指摘されて一部情報公開したが、最近はウェブサイトの住所が私書箱になっている。実態は、GIGAZINEでも紹介されているように、雑居ビルの一角で、ここで4400万台もの受信機を「審査」できるはずがない。実際には、ARIBの会員企業が自社で規格を決め、それ以外の企業にはテレビを作らせないように参入を阻止するためのペーパーカンパニーである。

社長の浦崎宏氏は、NHKの元経済部次長で、私と一緒に銀行の不良債権にからむ経済犯罪を追及した記者である。このような明白な経済犯罪(独禁法・放送法違反の容疑もある)を8年間にわたって続けてきた責任は、当然とるのだろう。これ以外に役員に名をつらねている在京キー局も、いつも役所に「情報公開」を要求しているのに、この違法企業の実態はひた隠しだ。他の企業にはうるさく追及する「コンプライアンス」はどうなっているのか。