このところ、いろんなメディアから「格差社会批判の批判」みたいな取材が来る。「ワーキングプア」が消費しつくされたら、今度はその批判で飯を食おうということらしいが、いい加減うっとうしいので、ここでまとめて書いておく。

先日の秋葉原事件の犯人も、年収は200万円というから、韓国の一人あたりGDPぐらいで、絶対的基準でみれば「プア」とはいえない。精神異常者というのは一定の確率でいるので、こういう突出した事件を一般化することはできない。ブルーカラーの待遇は労働需給の従属変数なので、それ自体を「是正」することは無意味だ。「日雇い派遣」の禁止は、企業がアンケートに答えているように、(もっと不安定な)アルバイトに置き換わるだけである。

問題はワーキング・プアではなく、その裏側にいる中高年のノンワーキング・リッチである。私のNHKの同期は、今年あたり地方局の局長になったが、話を聞くと「死ぬほど退屈」だそうだ。末端の地方局なんて編成権はないから、ライオンズクラブの会合に出たり、地元企業とのゴルフコンペに参加したりするのが主な仕事で、「あと5年は消化試合だよ」という彼の年収は2000万円近い。

日本経済の生産性を引き下げて労働需要を減退させ、若年労働者をcrowd outしているのは、こういう年代だ。彼らは世間的には、それなりの地位について高給を取っているが、本人は「生ける屍」である。年功序列などという愚かな雇用慣行がなければ、まだ現場で働けるのに、こうして「座敷牢」で50代を過ごす。官僚の場合は、特殊法人に天下って税金を浪費する。

経済の生産性を決めるのは、人口の5%ぐらいの意思決定を行なう人材の質である。かつては優秀な人材が製造業に集まって世界進出を果たし、日本経済を牽引した。しかし産業の軸が製造業から外れたあとも、彼らは衰退する製造業に残り、それにぶら下がる非生産的な銀行や官僚機構でも、優秀な人材が大量に社内失業している。こんな状況は日本経済にとっても迷惑だし、彼らも幸せではない。こうしたノンワーキング・リッチを強制的に早期退職させ、その退職金を増額して起業させる政策というのはとれないものか。

追記:「オヤジの起業」に関心が集まっているようだが、これは半分冗談。主旨は、ブルーカラーの雇用の固定化ではなく、ホワイトカラーの雇用の流動化が重要だということである。