「消費者重視」と称して進められている統制経済については、当ブログで何度も問題点を指摘したが、けさの朝日新聞によると、今度は経産省がクレジット業者の規制に乗り出すという。いわゆる悪質商法で買った商品の割賦販売契約を、消費者側が一方的に取り消す権利を認めるものだ。

この「悪質商法」は、きわめて漠然と定義されており、同じ商品を複数買っただけでも悪質と認定されるそうだ。これによって、また「グレーゾーン」が大量に発生し、貸金業法の改正で飯の種がなくなったクレサラ弁護士が、今度はクレジット業者相手に「無理やり売りつけられたので金は払わない」という訴訟を大量に起すだろう。

こういう官僚や弁護士と議論していると、何か基本的な知識が欠落していると感じるのだが、最近の後藤田正純氏の記事宇都宮弁護士の記事へのコメントで、それがやっとわかった。役所の会計は現金主義なので、彼らはキャッシュフロー(入金と出金の流れ)の概念を理解していないのだ。企業の売り上げは税金のようにコンスタントに入ってくるものではなく、経常利益は黒字でも一時的に手形が落とせないといったことは、中小企業にはよくある。こういう場合、月2%ぐらいの金利でつなぎ資金を貸す業者は必要なのだ。

これは消費者でも同じで、難病の手術に500万円かかるが、手元に200万円しか貯蓄がないということはありうる。この場合、サラ金で300万円借りて数年かけて返済すれば、命は助かる。かりに返済できなくて破産したとしても、死ぬよりましだろう。それとも後藤田氏は「貧乏人は借金で苦労するより死んだほうがましだ」とでもいうのか。

クレジット(借金)というのは、このようにキャッシュフローが不均等で出金が一時的に入金を上回る場合、それを調整するために存在するのだ。これはアーヴィング・フィッシャーが100年近く前にのべたことで、どんな経済学の教科書にも書いてある。行政が消費者重視と称して勝手に借金を禁止し、事後的な契約破棄=ホールドアップをどんどん認めたら、クレジット会社はリスクの高い貧乏人には貸さなくなるだろう。

何度もいうが、こういう家父長的な事後の正義こそ、結果的には消費者への与信を減少させ、貧乏人には必要な医療も耐久消費財も手に入らなくする、消費者の敵なのだ。金融庁が貸金業者をつぶしたおかげで、昨年の消費者ローンは年間1兆円以上も減り、今後数年で半減するとみられている。今度は経産省のおかげで、先進諸国で最低水準の個人消費はさらに落ち込むだろう。