今年のダボス会議で行なわれたビル・ゲイツの演説「創造的な資本主義」が、いろいろ論議を呼んでいる。要するに「もうけを社会に還元しよう」という、最近はやりの企業の社会的責任(CSR)というやつだ。

しかし、これについてはミルトン・フリードマンの「企業の社会的責任は利益を増やすことだ」という明快なエッセイがある。経営者が、株主から借りた金を利益に貢献しない「社会的」事業に費やすことは、一種のモラルハザードである。日本の経営者が、ただでさえ少ない利益をそういう道楽に浪費するのは、株主や従業員に恣意的に「課税」する社会主義だ。

ただしフリードマンも、ゲイツのように資本家が自分でもうけた金を道楽に使うことは否定していない。問題は、それが役に立つかどうかだ。イースタリーは、ゲイツが彼の本を批判したのに対して、「途上国に必要なのは先進国の『やさしい資本主義』のお情けではなく、途上国自身が資本主義経済を建設して自立することだ」と反論している。