きのうヤフーとグーグルの(間接的な)関係者と話したら、当然のことながら、今度の買収の話題が出たが、みんな一様に否定的だった。
  • クビになったテリー・セメルのおかげでぐちゃぐちゃになったヤフーを、また62%ものプレミアムで(借金までして)買おうって、ビル・ゲイツはどうかしたんじゃないの?

  • 古川享氏もいっているように、孫正義氏がヤフーのスタートアップの際、ゲイツに相談したとき買っていれば、数百万ドルですんだのに・・・

  • NYタイムズの社説まで、「この買収はどうせ失敗するから、規制当局はほっておけ」と冷たい。
経済学的に考えると、MSの戦略は一時代古い。製造業なら、物的資産の所有権によって被買収企業をコントロールできるが、ネット企業の不可欠資産は物的な工場ではないからだ。たとえば、かつて世界最大級の広告代理店だったサーチ&サーチが1995年に創立者のサーチ兄弟を追い出したとき、彼らが仲間を引き連れて新しい会社をつくり、元の会社は没落してしまった。

情報サービス業の不可欠資産は人的資本だから、「株主価値を最大化する」という資本主義のマントラは必ずしも正しくない。その代わり重要になってきたのは、Rajan-Zingalesの指摘するように、ブランド社風*(corporate culture)と社員のモチベーションだ。海部美知さんのいう「シリコンバレーとシアトルのDNAの違い」というのが、実はいちばん大事なのである。

たとえば、シスコシステムズは100近い企業を買収してきた結果、一つの企業というよりサンノゼ市内に散在する数十の企業のゆるやかな連合体だ。それを統合しているのは、垂直統合企業のような命令系統ではなく、シスコのブランドと社風である(どこのビルでも、スーツを着た社員は1人もいない)。ジョン・チェンバースCEOが企業を買収するときの基準は、「カルチャーが合うかどうか」。いくら高収益でも、社風の合わない企業は買収しない。特に敵対的買収は、絶対にしない。

他方、グーグルは「株主価値は最優先の目標ではない」と公言し、資本主義の次の社会をめざしている。MSは、資本主義の企業としては最強だったかもしれないが、いま始まっているのは、資本主義とその次の社会の闘いだ。異なるカルチャーの企業が敵対的買収で合体しても、AOL=タイム・ワーナーのように社内政治で自壊するのが関の山ではないか。

(*)Rajan-Zingalesはintegrityと書いている。Corporate cultureについては、Kreps参照。