当ブログの記事をもとにした本が来週出る(アマゾンでは予約可能)。まえがき目次はウェブで読める。

「池田信夫ブログ集成」という副題がついているが、内容の1/3ぐらいは雑誌原稿や論文で、ブログの記事もあちこちに散らばった話をまとめ、大幅に書き換えたので、当ブログの読者が読んでも損はしないだろう。世の中にウェブの入門書は多いが、本書は「中級テキスト」をねらったので、「インターネットとは何か」を知りたい人には向いていないが、『ウェブ進化論』の次に読む本としてはいいと思う。

自分の本を自分で書評するわけにはいかないが、あえて一言いえば、よくこんな小むずかしいブログが毎日2万~3万アクセスも読まれるものだな、とあらためて不思議に思う。たぶん、これはブログがまだ発展途上のメディアだからで、紙媒体でいえば、昔、紙が不足していたころ『世界』などの総合雑誌が売れたのに似ているのではないか。ブログがもっとメジャーになり、ビジネスとして使われるようになれば、こんなまじめなブログの相対的な位置は下がるだろう。

著作権とか産業構造などの重いテーマをカジュアルに論じて、短絡的に結論を出しているように見える面もあるかもしれない。それぞれのテーマについて深く知りたい人は、私の学術論文を読んでもらうしかないが、本書が過去の論文と違うのは、狭い意味での経済学の枠組で必ずしも考えていないことだ。モジュール化とかオープンソースなどの新しい現象を分析するには、従来の物理学的モデルでは限界がある。経済学界でも、こういう限界は意識されはじめており、行動経済学や実験経済学などの新しい手法が試みられているが、それが新しいパラダイムを生み出すかどうかはわからない。

私がいつもブログの読者として思い浮かべているのは、霞ヶ関で夜遅くまでくだらないペーパーワークをこなしながら、日本はこれでいいのだろうかと疑問をもち、改革の方向をさぐっている若い官僚だ。そういう人に少しでも私のメッセージが届けばうれしい。